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時代小説、映画、JAZZ、それらを大人の楽しみとして愛でること。雨の夜の鴉のごとく、耳鳴りとともに日々の悪夢に苛まれつつも。

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夫婦の味は「無用の用」-宇江佐真理「卵のふわふわ-八丁堀喰い物草紙・江戸前でもなし」

「卵のふわふわ-八丁堀喰い物草紙・江戸前でもなし」

宇江佐真理「卵のふわふわ」
(講談社文庫)


こういう題名というのは時代小説にありなんでしょうか(笑)
宇江佐真理という人は、自分では本の題名をつけるのは上手ではない、
と言っていますがなかなかどうして、
とくにこの題名などはちょっと意想外でいて、
でも自分の小説の資質をよく表している気がします。
それにしても「卵のふわふわ」とは(笑)
おそらく宇江佐真理とは知らず、題名見ただけでは読みませんねきっと(笑)
でもこれがまたじつに泣かせる一品(笑)
ファンならお気に入りの一冊という方も多いんじゃないでしょうか。
八丁堀同心の妻を主人公にしているので、捕り物小説とおもいきや、
夫と妻、嫁と舅、そして嫁と姑。
食べ物をうまく介在させた家族小説ですね、これは。
宇江佐真理、2004年の長編小説です。
喰い物草紙と銘打ってるだけに、出てくる食べ物もなかなか美味しそうです。
卵のふわふわはだし汁に卵をとけ込ませるだけの料理だけど、
懐かしそうな感じで、思わず食べたくなります。

のぶは隠密廻り同心椙田正一郎の妻。
八丁堀に嫁に来て6年になる。
だが二度も子供を流産してからは、
夫の正一郎の仲はぎくしゃくとしたものになっていた。
そんなのぶを優しく労り、慰めとなっているのは舅の忠右衛門の存在だった。
忠右衛門は無類の食い道楽。
姑のふでは口は悪いが、根は優しい人だった。
のぶは二人の存在に助けられ、椙田家の嫁としてここまでやってこれた。
のぶは偏食である。そのことで棘のある言葉を言う正一郎に、
心根の冷たさを感じ、のぶはいつしか離縁を考えていた。
そんなのぶがある日、不義まで疑う正一郎の言葉に傷つき、
家を出ることを決心するが……

夫が冷たくて、舅が優しい。往々にしてあることです。
いわば平凡な題材なんですが、それを女性の地位が低く、
家長制度のきつい武家社会、
そういう不自由な環境である時代に持ってくると、
なぜか新鮮な題材になってきます。
そこに食べ物を通してのサイドストーリーを絡ませる。
上手い運びです。
読み始めからもうだいたい結末の見当はついているのですが(笑)
それでもこの小説を読んでいるときの、
ある種の幸福感はなにものにも代え難い。
上質の少女漫画を読んでいる、そんな幸福感にも繋がっている気がします。
宇江佐真理はつくづく不思議な時代小説家です。
正一郎は若いときの恋に傷つき、
少なからず女性不信のトラウマを抱えている。
のぶは正一郎が若いときの恋の相手が忘れられないのではないかと思い、
正一郎は正一郎で、本当はのぶのことを愛しく思っているのに、
なぜか素直になれず、のぶを傷つけてしまうことばかり。
不器用な男なんですね。
最初読者は本気で正一郎憎し(笑)
なんて思わせてしまうあたり、なかなかです。
舅の忠右衛門は擦れ違うふたりの気持ちに気づいていて、
それとなく和解させようとしますが、無理強いはしません。
何事にも自然体の忠右衛門。
最後の章「珍味 ちょろぎ」で忠右衛門が好きだったちょろぎが出てきます。
ちょろぎは巻貝に似たシソ科の多年草の根です。
漬物なんかにすると、際立って美味しいわけではありませんが、
妙に癖になる食感。
で、黒豆なんかに添えて出す。
すると黒豆そっちのけでちょろぎばかり食べてしまうといったことになる。
行方不明となった忠右衛門を偲び、正月に集まっているとき、
おせちに黒豆と添え物のちょろぎが出る。
全員で黙りこくってちょろぎを食べます。
椙田家に出入りしている太鼓持ちの今助は、
忠右衛門になぞらえ、添え物のちょろぎを「無用の用」と言います。
ふでは怒りますが、のぶはなんだか納得したような気になる。
そして読者も忠右衛門の存在とは別に、ある意味、
夫婦の味というのも「無用の用」なのかも知れないと思ったりします。
いい場面です。

ところでのぶは舅の忠右衛門から「のぶちゃん」と呼ばれています。
これだけで忠右衛門の心のなかで、のぶの存在がどうであるか、
手に取るようにわかります。
宇江佐真理は主人公の名前を登場人物に
「~ちゃん」と呼ばせることが多いですね。
これが暖かみというか、人肌というか、
宇江佐真理の人情もののトーンを決めている、
ひとつの重要な成分になっている気がします。
たとえば「春風ぞ吹く」の村椿五郎太だったら
「ごろちゃん」
「無事、これ名馬なり」の村椿太郎左右衛門だったら
「たろちゃん」
「斬られ権三」の権三は
「ごんちゃん」
「泣きの銀次」だったら「銀ちゃん」という風に、
(きりがありませんが(笑))
他の登場人物に親しみを込めてそう呼ばせます。
もうすでにその呼び方で、主人公がどういう人物であるか、
そしてそんな風に呼ぶ人たちは主人公に対して、
どのような気持ちを抱いているか。
そこですでに人情というのが感じられるわけです。
人情というのはどこまでいっても人と人との関係ですからね。
不思議なもので、
実生活でも自分の回りにそういう風に呼ぶ人がいるとすれば、
かなり親しく感じているし、愛情も感じていることが多いです。
嫌いなやつに「~ちゃん」なんて呼ばないですからね(笑)
宇江佐真理はそういうことを了解して、うまく小説の中にとけ込ませています。
これがほのかなユーモアも感じさせ、
愛らしく、
わかりやすい小説になっている要素だと思います。
この小説、個人的にもお気に入りの一冊です。

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2009-03-15(Sun) 15:41| 宇江佐真理の世界| トラックバック 0| コメント 4

コメント

ご訪問ありがとうございます。
私の好きな分野でちょっと嬉しくなってしまいました^^

またちょくちょく寄らせていただきます♪

2009-03-16(Mon) 01:12 | URL | MIKOTO #WsFg0EVg[ 編集]

読むから、学ぶまでの興味。

自分とは、まるで違う時代や世界は
それはそれとして興味も惹きますが
命を繋ぐ食べるものや、人間関係も
今の時代に併せて引き込む力量が
有るのでしょうか。
筆者は、小説を描く背景を十分熟知した上で
表わしているので、読者も少なからず
その時代に興味を持つようになるのか
と。

2009-03-16(Mon) 19:54 | URL | ふわネコ #-[ 編集]

こんばんは。初めまして。
私も宇江佐真理さん大好きです。
「卵のふわふわ」いいですね。食べ物との絡みも。
ほんと、食べたくなっちゃいましたもん。
他には
「雷桜」「あやめ横町の人々」「無事これ名馬」「おちゃっぴい」が好きです。
こちらのブログは、しっかり書き込まれているので
ああ、そうだ、そうだったって
共感しながら読ませていただきました。

2009-03-17(Tue) 00:14 | URL | morinokaori #EwbB8/BI[ 編集]

morinokaoriさんへ

宇江佐真理はいいですね。
morinokaoriさんが挙げた本は全部好きです。
まだ「雷桜」は手付かずですが。
最近とくに宇江佐真理にハマって、
藤沢周平以外では一番好きかもです。
でも読み続けていると、
だんだん読むものが無くなってくることに気づき、愕然と…(笑)
全部読んでしまったらさぞ寂しいでしょうね(笑)
ちょっとスピード落とさなきゃ、と思って、
「雷桜」なんかは残してあります。
ドンドン書いてくれればいいんですけどね(笑)

2009-03-17(Tue) 11:05 | URL | -rainbird- #-[ 編集]

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