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時代小説、映画、JAZZ、それらを大人の楽しみとして愛でること。雨の夜の鴉のごとく、耳鳴りとともに日々の悪夢に苛まれつつも。

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武家のおんなたち-乙川優三郎「屋烏」

「屋烏」

乙川優三郎「屋烏」
(講談社文庫)


乙川優三郎は女性を描くのが上手な作家だと思う。
個人的にはこの作家のものはどちらかというと市井ものより、武家もののほうが好きなんですが、
とりわけ女性にとって過酷な環境であった武家社会のなか、
抑えた生き方を強いられた姿がよく乙川優三郎の筆に合っている感じがします。
もちろん市井もののなかにも魅力的な女性がたくさん登場しますけれど。

「屋烏」

政争に巻き込まれて斬死した父親に代わり、
家長として幼い弟を育て、長い間家を守ってきた揺枝。
すでに弟も元服して嫁を貰い、家の主として自立している。
気がつけば婚期も逸し、世間からは「松の行かずどの」とあだ名されている。
このままではいつか家の厄介者になると揺枝は思い、そろそろ家を出ねばと考えている。
ある日揺枝は竜神社を訪ねる。
その帰りに下駄の鼻緒が切れ、すげ替えてるところに一人の武士から声を掛けられる。
武士の名は宮田与四郎。
揺枝の父が死んだ現場に居合わせた剣士である。
与四郎の顔にはそのときの刀傷が生々しく残っていた。
与四郎の評判は悪く、粗暴で誰彼となく喧嘩を仕掛けるという噂があった。
だが揺枝は与四郎の心優しげな態度を見て、
与四郎も無責任な人の噂に追い回されているのではないかと直感する。
揺枝の心に初めての恋心が芽生える。
そんなある日与四郎が私闘を行い、家禄を削られお役目を解かれたという話を揺枝は聞く。
揺枝は思い切って与四郎の家を訪ねようと思い立つ。

屋烏之愛という言葉があります。
屋烏とは屋根に留まっている烏のことで、
愛するあまりその人の家に留まっている烏まで好きになってしまうという意味です。
ゆえに屋烏というのは、その家で一番必要のないもの、
という事になってしまいます。
逆に屋烏には家の守り神、そういう意味も暗に含まれています。
揺枝と与四郎はそれぞれ家の屋烏であり、藩の屋烏である、
そういうことだと思います。
そのふたりが出会い、お互いに好意を持つのですが、なかなかすんなりとは進展しない。
感情を抑える恋、それだけに小説の最後はかなりほろっときます。
この短篇、どうしても藤沢周平の珠玉の短篇「山桜」と引き比べてしまいがち。
それぞれに良さがありますが、
「屋烏」のほうの揺枝がより強い女性に描かれている感じがします。

「穴惑い」

足掛け三十四年に及ぶ敵討ちの旅を終え、上遠野関蔵が郷里の藩に帰ってくる。
我が家には妻の喜代が待っていた。
おそらく死んだと思われていた関蔵が帰ってきたことで、
様々な出来事が上遠野家の身辺や家中に巻き起こる。
家督のこと、自身のこれからのこと。
そして喜代のこと。
果たしてそれらを関蔵はどう始末していくのか。

穴惑いとは、時期が近づいても、冬眠のための穴を探せないでいる蛇のことだと小説にあります。
無事仇討ち本懐を遂げ、
家に帰ってもそこはすでにもう自分がいるべき場所ではなくなっている。
これは関蔵自身の比喩なんでしょうが、
それにしても三十四年も家を空けるというのは途方もないことですね。
まるで浦島太郎(笑)
氏家幹人の「かたき討ち― 復讐の作法」なんか読んでも、
仇討ちの旅に出てとしても、
首尾良く仇に出会うことは本当にまれで、
一生出会えずそのまま他国の地で亡くなる、
なんてことはざらだったようです。
この制度は武家社会の数ある過酷な制度のなかでも、
ダントツに厳しいものですね。
残された家族も不幸です。
そういうことですから、
関蔵の帰還から、自分たちの終の棲家を求めて江戸へ行き、
失った夫婦の歳月を少しずつ取り戻していく様子はなかなかいいですね。
この小説、武家のしきたりに生きる妻の喜代への視線が、
とても肯定的で、暖かい感じがします。

武家の妻女を生きるというのは、とても厳しかったんだろろうと思います。
そういう女性たちにひかりを当て、制度に負けない芯の強さを、
魅力と感じさせる乙川優三郎の筆は確かなものだと感じました。

そのほかの収録作品

「禿松」
「竹の春」
「病葉」

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2008-10-12(Sun) 17:55| 乙川優三郎の世界| トラックバック 0| コメント 0

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