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時代小説、映画、JAZZ、それらを大人の楽しみとして愛でること。雨の夜の鴉のごとく、耳鳴りとともに日々の悪夢に苛まれつつも。

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侍の夫婦愛-藤沢周平「隠し剣孤影抄」

「隠し剣孤影抄」

藤沢周平「隠し剣孤影抄」
(文春文庫)


言わずと知れた藤沢周平の剣豪小説集第一弾。
次の「隠し剣秋風抄」とともにつとに有名な小説集です。
山田洋次が映画化し、
藤沢周平の名を時代小説を読まない人たちにも広げたのはご存知のとおり。
剣豪小説といっても他のものとはだいぶ趣を異にしています。
まず剣豪といっても登場する主人公たちはたいていが平侍。
それも中以下の下級武士といった設定。
下級武士ゆえに剣の奥義をきわめたといっても出世するわけではなく、
富裕になるわけでもない。身分社会に押し込まれて、
暮らしの中でも汲々としている、うだつの上がらない平侍のままです。
だがひとたびやむにやまれる状況に追い込まれたとき、
一人相伝の秘剣を遣って窮地を切り抜ける
(なかには悲劇に終わってしまう場合もありますが)
この胸をすく飛躍こそが、このシリーズの他にはない妙味だろうと思います。
秘剣のネーミングも全然強そうじゃありません(笑)
それがこのシリーズを親しみやすくしている理由のひとつだと思います。
映画化された「隠し剣鬼の爪」など有名なものもありますが、
他にも深い味わいの作品もあるのでそちらのほうを。

「臆病剣松風」

瓜生新兵衛は海坂藩普請組に勤める百石の侍。
妻の満江は新兵衛が鑑極流の遣い手で、剣の奥義を授けられた剣士だと聞き、
嫁入ってきたのだが、夫が並はずれた臆病者だと薄々気づき、
最近は夫が少々疎ましくなってきていた。
そんな満江に従兄弟の千田道之助が言い寄ってくる。
満江の心は少なからず揺れ動く。
そんな矢先、若殿が命を狙われ、新兵衛に警護の命が下る。
新兵衛が持つ鑑極流守りの秘剣、松風を恃んでのことだった。
新兵衛はその命を怯えながらも引き受けるが……

この作品、なかなかの佳品だと思います。
なにより臆病だというのがいいですね(笑)
意表をついた性格設定です。
臆病な剣客がいるか、というツッコミはさておき、
この秘剣を守りの剣だとしているところにミソがあるように思います。
松風はその場を後退することなく、ただひたすら守り、受け流す秘剣です。
自分からは攻撃しない。
そのことが新兵衛の細かくて臆病な性格とじつにマッチして違和感がありません。
それとふだんは並はずれた臆病者だが、
窮地に陥ったとき、鮮やかな秘剣で切り抜ける。
この落差ですね(笑)
この落差が大きければ大きいほど爽快感があるという仕組み。
たぶんそれが心地良いというか、カタルシスになってます。
夫を誇らしげに思い直していく妻の満江の心の動きも良いですね。

「女人剣さざ波」

浅見俊之助は剣のほうはからっきしである。
その彼が家老の命で藩で秘かに行われているらしい不正を探るため、
茶屋に入り浸っていた。
家老が俊之助が常日頃茶屋で遊び回っているという情報を聞き、
不正の密談が茶屋で行われる可能性が高いため、
俊之助に探索を命じたのである。
探索には浮気相手であるおもんも一緒である。
俊之助の妻、邦江は醜婦だった。
邦江の姉は評判の美人で、それなら妹もさぞかし美人だろうと、
よく確かめもせず娶り、俊之助は裏切られた気持ちになり、
夫婦の間は最初からうまくいっていなかった。
茶屋通いの原因のひとつはそれである。
だが邦江は猪谷流の秘剣「さざ波」を伝授された女剣士であった。
探索が終わると同時に、敵方の武士に俊之助は果たし合いを申し込まれる。
それを知った邦江は、日を変えることを相手に申し入れ、
俊之助の代わりに果たし合いの場に赴くが……

夫婦愛の物語です(笑)
色浅黒く狸に似た風貌を持つ邦江は、
自分が俊之助に疎まれていることをよく知っている訳なんですが、
邦江自身は俊之助を愛しく思っています。
俊之助の母親はそういう邦江を良い嫁だと見抜き、
俊之助を諭します。
こういうところが良いですね。
邦江という醜婦を全否定しない。
誰かがちゃんと正当に評価し、見守っています。
だから読んでいてもきつくなりません(笑)
最後、果たし合いの場に後から俊之助が駆けつけます。
傷だらけの邦江を背負って帰るんですが、
去り状をくれと言う邦江に
俊之助は「馬鹿を申せ」と言い、
それから「仲良くせんとな」と呟きます。
ほろっときますね、このセリフ。

夫婦愛をテーマとした作品ふたつということになりましたが、
久しく忘れていたものを思い出させてくれる感じです(笑)
夫婦愛をテーマとしたものは、いまではなかなか書きづらいのではないかと思います。
時代小説に描かれる封建社会という重い足かせが、
夫婦の愛を余計に際だたせるんでしょうね。
こういう夫婦のかたちが、
藤沢周平にとって、ある意味で理想だったのかも知れません。

そのほかの収録作品

「邪剣竜尾返し」
「暗殺剣虎ノ眼」
「必死剣鳥刺し」
「隠し剣鬼の爪」
「悲運剣芦刈り」
「宿命剣鬼走り」

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2008-10-14(Tue) 01:09| 藤沢周平の世界| トラックバック 0| コメント 0

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