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時代小説、映画、JAZZ、それらを大人の楽しみとして愛でること。雨の夜の鴉のごとく、耳鳴りとともに日々の悪夢に苛まれつつも。

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人としての誇り-藤沢周平「隠し剣秋風抄」

「隠し剣秋風抄」

藤沢周平「隠し剣秋風抄」
(文春文庫)


海坂藩で暮らす剣客たちの悲喜交々を描いた連作、隠し剣シリーズの第二集。
隠し剣シリーズも全部で十六編となり、登場する剣客たちもじつに多彩です。
藤沢周平の初期に属するこのシリーズ。
あたたかみと、ほど良い暗さとが同居した滋味溢れる傑作シリーズですが、
通底するテーマは思うに矜持、つまり人としての誇りではなかったかと、そう思います。
不遇であったり、己が身に負を背負わされている主人公たちにとって、
封印された一人相伝の秘剣は人としての誇り、その最後の拠り所です。
そして窮地にその秘剣を解き放つときは、人としての激しいプライドの発露であり、己への生きたことの証だてなんだろうと思います。
この「隠し剣秋風抄」最後を飾るのは「盲目剣谺返し」です。
「武士の一分」という題名で映画化されたのは記憶にあたらしいところ。
一分とは身の面目であり、身分にふさわしい名誉のことです。
盲目となった三村新之丞が妻をたぶらかした元上司に、文字通り武士の一分を賭けて挑んでいく物語なんですが、シリーズの最後にこの作品を置いたのは意味のあることで、シリーズを通して藤沢周平が描きたかったのは、やはりこれじゃなかったかと、そう思いました。
でもまあ、そんなことまで考えなくても理屈抜きに楽しめる傑作シリーズなのは確かです。

「酒乱剣石割り」

作事組の弓削甚六は丹石流の秘剣石割りを伝授されたほどの剣士。
だが悪癖があった。酒乱なのである。
本人には酒を飲んで暴れたという記憶はまるでない。
家では大女の妻に頭が上がらず、口べたでいっこうに風采の上がらない男なのだが、ひとたび酒が入れば、気分が高揚し集中力も増して、朗らかになり、信じられないほど滑舌になる。
しかしそれが頂上を越えてしまうと、途端に訳の分からない哀しみが胸を締め付け見境もなく暴れ出す。そういう男だった。
その甚六が次席家老に呼び出される。
聞けば国に害をなす側用人を討つので、その息子である剣客の成敗を命じるというものだった。
甚六は次席家老から成就の暁まで酒は飲むなと厳しく言い渡されるが……

どうも酒好きのものにとっては身につまされる話です(笑)
小柄でいっこうに風采が上がらない甚六は、さらに酒乱という不名誉なレッテルを張られています。
酒好きなのにいつも飲む金にも困っている。
その甚六にはこれが兄妹かというほど似ていない美人の妹がいます。
その妹がさらわれ、まさしく乱暴狼藉されようかという現場に乗り込んでも、
甚六はまるで剣士としての力量を発揮できない。
そういう情けない甚六が、最後には秘剣で見事に勝ちます。
でもこれは酒の力を借りてのことなんです(笑)
で、その酒乱の勢いで妹の復讐にも行こうとする。
もう自分では止められない。
酒乱ゆえに武士の誇りを賭して彼岸へ飛ぼうとする甚六。
そこになんとも云えない作者の皮肉な、それでいて暖かい視線があります。
いやほんと、この話、身につまされます(笑)

「盲目剣谺返し」

海坂藩毒味役を賜る三村新之丞は、お役目の際、笠貝の毒にあたり盲目となった。
その新之丞には貞淑な妻の加世がいた。
骨身を惜しまず尽くす加世に支えられて生きる日々。
だが盲目ゆえに気配に鋭敏になった新之丞は、以前にはなかった妻のかすかな異変に気づく。
従姉の以寧からも、夫が加世を歓楽街で見かけたと言っていると告げられ、
半信半疑ながら下男の徳平に出かける加世の後を附けさせる。
そして加世が新之丞の元上司である島村と会っていることが判明する。
加世は盲目のために無役となった新之丞のために、
自分の身を犠牲にして島村に取りなしを頼んでいた。
だが島村は加世の弱みにつけ込み、加世の体を弄んでいただけだった。
新之丞は加代を離縁し、武士の誇りを賭けて島村を討つため、
加世のいない寂寥に耐えながら、伝説の秘剣を会得しようと稽古に励み出す。

映画化ですっかり有名になったストーリーです。
いまさらな感じがするけれど、やはりこのストーリーはシリーズの中でも出色のものだと思います。
シリーズ最後の方には「暗黒剣千鳥」もそうですが、秘剣を持っていなくて、
秘剣に対抗する主人公というのも出てきます。
シリーズも回を重ねてよりヴァラエティに富む構成になっているんですね。
新之丞もはじめから秘剣を習得していない主人公という設定です。
その秘剣もまだ誰も見たこともない伝説のもの。
その困難な伝説の秘剣を盲目の身で会得し、
島村に打ち勝っていく過程がカタルシスを呼び、
夫婦の愛をさりげなく取り戻す結末とない交ぜになって、深い余韻を残します。
最後に徳平の配慮で、女中となってひそかに三村家に戻った加世。
その加世が出した料理の、長年親しんだその味で加世だと気づく新之丞。

「食い物はやはりそなたのつくるものに限る。徳平の手料理はかなわん」

そうさりげなく言う場面はやはり泣けます(笑)
この作品は映画になるべくしてなったというほかありませんね。

そのほかの収録作品

「汚名剣双燕」
「女難剣雷切り」
「陽狂剣かげろう」
「偏屈剣蟇ノ舌」
「好色剣流氷」
「暗黒剣千鳥」
「孤立剣残月」

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2008-10-18(Sat) 21:25| 藤沢周平の世界| トラックバック 0| コメント 0

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