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時代小説、映画、JAZZ、それらを大人の楽しみとして愛でること。雨の夜の鴉のごとく、耳鳴りとともに日々の悪夢に苛まれつつも。

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武家の世界の過酷さ-藤沢周平「冤罪」

「冤罪」

藤沢周平「冤罪」
(新潮文庫)


1974年から1975年の1年間に書き上げられた、いわゆる武家ものの短篇小説集。
武家の世界というものの過酷さがよく描かれている。
どの作品も味わい深いが、
この短編集の中でとくに注目したいのは「潮田伝五郎置文」と「臍曲がり新左」の2編。

「潮田伝五郎置文」

叶わぬ初恋に剛直に殉じたある武士の話。身につまされます(笑)
潮田伝五郎と井沢勝弥の河原での果たし合いから物語は始まる。
二人は幼なじみであるが、伝五郎はわずか十七石取りの軽輩。
井沢勝弥は三百石の上士の跡取りである。勝弥は伝五郎を貧乏ゆえに侮り、
幼いときから二人は因縁浅からぬ間柄だった。
果たし合いは伝五郎からの一方的な申し込みによるものだった。
その理由とは、井沢勝弥が幼少の頃から秘かに心を寄せ、
伝五郎にとっては女神の位置までに高まっていた友人の姉、
七重の不倫相手と知れたためであった。
七重もまた上士の娘であり、今では藩政を切り回す男の妻となっていた。
伝五郎にとっては井沢勝弥は女神を汚す存在だったのだ。
伝五郎は井沢勝弥を討ち取り、その場で自らも切腹して果てる。
七重にとって、伝五郎は路傍の石くれぐらいの存在に過ぎず、
その伝五郎がなぜ愛する井沢勝弥に討ち果たしたのか不可解であり、
その事で伝五郎を憎んでさえいる。
伝五郎と七重の、この心根の遠い距たりは、
そのままどうしようもない武士の世界の身分や階級を映し出している。
このあたりの洞察力が藤沢周平の真骨頂かもしれない。
それにしても霧深い夜明けの河原で行われた果たし合いのシーンは印象的。
一人が討ち果たされ、その後その骸の傍らでもう一人が切腹する。
霧が晴れ、明るくなると河原にはふたつの骸が横たわっている。
そのことを知らぬげに川はいつものように流れていく。
この2つの死はありふれた時間の中で生起する単なる物事のようだ。
死を時間の遠景のなかで捉えている感覚。
その描写に藤沢周平の虚無的なある眼差しを見る気がします。

「臍曲がり新左」

臍曲がりで有名な治部新左衛門。反骨の古武士である。
あるとき隣家の青年武士、犬飼平四郎を助けることで、
藩の政治闘争に巻き込まれていく。
平四郎は新左衛門にとって日頃から厚かましいと思っている存在である。
新左衛門の娘、葭江と平四郎はどうも憎からず思っている間柄に思えて、
それも新左衛門にとっては腹立たしいことである。
それがこの事件をきっかけに平四郎との関係が始まり、
新左衛門が平四郎の言動に辟易しながらも見直したり、
呆れたりする様子がユーモアたっぷりに描かれて面白い作品。
臍曲がりと呼ばれ、新左衛門は時代と折り合うことが苦手な古武士だが、
しかし筋を通すときにはきっちりと通す。
そういうことを忘れがちな現在に、新左衛門はとても魅力的な存在に写る。
平四郎はまたある意味とても今風な若者で、
それを新左衛門と対比させることで、すごく現在的な物語になっていると思う。

そのほかの収録作品

「証拠人」
「唆す」
「密夫の顔」
「夜の城」
「一顆の瓜」
「十四人目の男」
「冤罪」

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2008-09-15(Mon) 11:36| 藤沢周平の世界| トラックバック 0| コメント 0

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