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時代小説、映画、JAZZ、それらを大人の楽しみとして愛でること。雨の夜の鴉のごとく、耳鳴りとともに日々の悪夢に苛まれつつも。

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海坂の四季-藤沢周平「蝉しぐれ」

「蝉しぐれ」

藤沢周平「蝉しぐれ」
(文春文庫)


藤沢周平のファンに、あなたのベストワンは何?と聞くと、この小説をまっさきに挙げる人が多いと思います。
それほどに人気の高い長編小説ですね。
藤沢周平が生み出した時代小説の傑作のひとつといっても過言ではない。
市川染五郎、木村佳乃主演で映画にもなりましたので、
「蝉しぐれ」という題名を誰しも一度は聞いたことがあると思います。
この題名、じつになんというかリリカル、ほんとうに美しい題名だという気がします。
今回読んだのは2度目。再読にも関わらず、最初読んだときと同じく、
夜も寝ないで一気に読み耽ってしまいました。
そして最初に読んだときに胸が詰まったあの箇所で、案の定、やっぱりウッと来ましたね。
物語の最初のほうなんですが、そのあたりに近づき、あ、ダメかも(笑)と思ったときはすでに遅く、胸が詰まって泪がじんわり……
年のせいか涙腺ゆるいことおびただしい(笑)

牧文四郎は十五歳。海坂藩普請組牧助左衛門の長男である。
ある夏の朝、家の裏を流れる小川に顔を洗いに出る。
隣家の裏では同じように同役の小柳の娘ふくが出て洗濯をしていた。
ふくは十二歳。ちいさい頃から物静かな娘であるが、体がふっくらと丸みを帯びはじめた年頃になると、少し文四郎を避けるような態度をとりはじめていた。
文四郎は何かふくに疎まれることをしたかと考えたが、いっこうに思い当たることがなかった。
そのときふくの叫び声が聞こえる。蛇に噛まれたのだった。
文四郎が駆けつけ、ふくの手を取ると指の傷口を強く吸った。
ふくは蛇の毒に怯えて泣いたが、文四郎は蛇はヤマガラシだから心配ないとふくをなだめる。
ふくは家に入り、文四郎は逃げた蛇を探して殺した。
剣の道場と私塾へ通い、貧しいながらも友人たちと楽しく励み語らう日々。
元服を目前に、海坂藩での文四郎の青春は、これからいっそう眩しい時期を迎えようとしていた。
そんな中、突然文四郎の運命を狂わす大きな異変が起こるのだった。

小説の舞台となるのは海坂(うなさか)藩。
そこに生きるある少年藩士の淡い恋、友情、そして成長を描いたものです。
こう書いてしまうといかにも平凡な青春時代小説を想像しますが、
運命に翻弄されながらも、強く生きていく少年の姿はつらつとして凛々しく、凡百のものには無いこの小説の大きな魅力になってます。
海坂藩というのは藤沢周平の小説にたびたび出てくる架空の藩です。
海坂は藤沢周平が結核療養時代に属していた静岡の俳詩「海坂」から名付けたもので、モデルとなったのはおそらく荘内藩。町は鶴岡だろうと言われています。
小説での海坂藩内の風景描写が、ほんとうに鮮明で懐かしく、読む者の深い郷愁を呼び起こします。

この小説にはちょっと哀惜というか、そんなものがすごく感じられます。
ひとつには文四郎や文四郎の父母、友人たちやふく、そういった人々の輪郭が、ある種の叙情を帯びているからではないか、とそう思いました。
そしてそれはどこからそんな感じがくるのだろうかと考えたとき、それはひょっとして海坂藩の風景ではないだろうかと。
つまり藤沢周平の手で描かれ、深い郷愁を呼び起こす海坂藩の四季の風景。
その四季の風景のなかにあるからこそ、誰も彼れものたたずまいが叙情を帯びてくる。
だから哀惜の感が強くなるのだと。
それを秋山駿は藤沢周平の詩魂と呼びましたが、まさしくその通りかもしれません。
もうひとつは文四郎とふくの淡い恋。
夏の終わり、文四郎が切腹した父親を一人で引き取りに行き、荷車に遺骸を乗せて家へと帰っていく場面があります。
人々の好奇の目に晒されながらも、途中で会った道場の後輩に荷車を押してもらい、遠い道のりをへとへとになりながら、ようやく自分の家のある坂の下まで帰ってくる。
父親の遺骸が重く、長いのぼり坂でふたりとも精魂尽き果てる。
そこへひとりの少女が文四郎の家の前から駆けてくる。
ふくです。
ふくはそばまで来ると、車の上の遺体に手を合わせ、それから歩き出した文四郎によりそって梶棒をつかんだ。無言のままの眼から涙がこぼれるのをそのままに、ふくは一心に梶棒をひいていた。
そして文四郎とふくの背に、しだくような夏の蝉しぐれ……
遺骸を乗せた荷車引いてんの、みんな子供なんですよ。
だめなんです(笑)
ここにくると万感胸に迫るものがあります。
書き写しているだけでももういけません(笑)
結局ここなんだろうと思います。
この先いろんなことがこの二人にふりかかってきますが、すべての始まりがこのさらりとした2、3行のなかに在ると思います。
とにかくとてもいい小説です。

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2008-10-23(Thu) 00:23| 藤沢周平の世界| トラックバック 0| コメント 1

コメント

こんにちは。

読んでみたなあと思っていた藤沢周平さんの作品、記事を読みその思いを強くしました。

今後の読書の参考にさせて下さい。
よろしくお願いします。

2008-10-25(Sat) 08:46 | URL | 「ふーこ」 #-[ 編集]

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