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時代小説、映画、JAZZ、それらを大人の楽しみとして愛でること。雨の夜の鴉のごとく、耳鳴りとともに日々の悪夢に苛まれつつも。

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山桜は泣けます-藤沢周平「時雨みち」

「時雨みち」

藤沢周平「時雨みち」
(新潮文庫)


武家物と市井物が入り交じった短編集。
1979年から1981年頃に書かれた十一編が入っています。
このなかでも注目は「山桜」
わずか20ページほどの短篇ですが、
珠玉の短篇という言葉はこのような小説のためにあるんだろうと思います。
じつは藤沢周平の作品の中で特に好きなもののひとつです。
つい最近田中麗奈と東山紀之で映画化されています。
観ましたが小説のラストにある野江の心情よりはどうも映画の方が軽い気がして、自分としてはいまいちでした。田中麗奈の野江というのはとても新鮮でしたが。

「山桜」

最初の夫の病死で実家に戻り、その後磯村の家に再嫁したが、家風に馴染まず、つらい日々を送っている野江が主人公です。
舞台はおなじみの海坂藩。
春先にひさしぶりに実家を訪れて叔母の墓参りを済ませた野江は、帰り道の丘にあった薄紅色の山桜の花に手を伸ばすが、届かない。
そのとき「手折ってしんぜよう」と声を掛てきたのが、かつて野江に縁談を申し込んだことのある手塚弥一郎という武士。その縁談は弥一郎が剣客だと知り、粗暴な性格ではないかと思って断った。
その弥一郎に「いまは、お幸せでござろうな」と訊ねられ、思わず「はい」と答える野江。
その後母に弥一郎のことを尋ねると、弥一郎は野江が娘の頃から知っていると言う。
自分を案じてくれている人がいる、野江はもう一度磯村の家で頑張ろうと心に誓う。
同時に心優しい弥一郎に惹かれている自分を感じます。
そんなある日、弥一郎が藩の奸臣、諏訪平右衛門を斬ったと知らされます。
馬鹿な男だと嘲笑する磯村の夫の言葉に耐えかね、
野江は持っていた夫の羽織を投げ捨てます。
こうして再び離縁された野江は、ある日山桜を手みやげに、
幽閉の身となっている弥一郎の家を訪ねます。
弥一郎はすぐに切腹とはならず、国主の帰還を待って沙汰を待つ身となっています。
家には弥一郎の母だけが暮らしています。
「いつかあなたが、こうしてこの家を訪ねてみえるのではないかと、心待ちにしておりました。さあ、どうぞお上がりください」
挨拶より先に、その花をいただきましょう、しおれるといけませんから、と弥一郎の母は言い、野江の手から桜の枝を受け取ると、また上がってくれとすすめた。
履物を脱ぎかけて、野江は不意に式台に手をかけると土間にうずくまった。ほとばしるように、眼から涙があふれ落ちるのを感じる。とり返しのつかない回り道をしたことが、はっきりとわかっていた。ここが私の来る家だったのだ。この家が、そうだったのだ。なぜもっと早く気づかなかったのだろう。
ちょっと引用が長くなりましたが、
これがラストの文章の一部です。ここに差し掛かるといつも胸が詰まります。

人はいつもなにかしらの選択を迫られて生きています。
その選択の積み重ねが歳月というものなのでしょう。
ひとつの道を選択したとき、選択されなかった別の道を行けばどうなったか。
「もしも…」という言葉ほど人にとって哀切なものは無いのかも知れません。
この小説の野江は今度こそ幸福になるかもしれない、という小さな希望が垣間見えます。
回り道して自分の行くべき道にたどり着いた野江の幸福を願ってやまない気持ちになります。
人は本当の出会いをいつも見つけられずにいる、哀しい存在なのでしょうね、きっと。

そのほかの収録作品

「帰還せず」
「飛べ、左五郎」
「盗み喰い」
「滴る汗」
「幼い声」
「夜の道」
「おばさん」
「亭主の仲間」
「おさんが呼ぶ」
「時雨みち」

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2008-09-20(Sat) 20:08| 藤沢周平の世界| トラックバック 0| コメント 0

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