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時代小説、映画、JAZZ、それらを大人の楽しみとして愛でること。雨の夜の鴉のごとく、耳鳴りとともに日々の悪夢に苛まれつつも。

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心の橋を渡る-藤沢周平「橋ものがたり」

「橋ものがたり」

藤沢周平「橋ものがたり」
(新潮文庫)


昭和55年に刊行された、橋をモチーフにした短編集です。
まるでモノクロームの映画でも観ているような感覚に捉われる、
静かな作劇空間。
江戸の市井で懸命に生きる人々の出会いと別れを、
さらっと切り取って哀感溢れる物語に仕上げる。
小説の職人藤沢周平の、その手腕を惜しみなく発揮した、
手練れというにふさわしい作品集です。

「約束」

住み込んでいたお店の年季奉公が明けたその日、
錺師(かざりし)の幸助は深川萬年橋へと向かっていた。
5年前に交わしたお蝶との約束を胸に。
5年前のある日、幸助の奉公先にお蝶が突然訪ねてきた。
お蝶は十三歳になる幸助の幼なじみだった。
いつもふたりで遊んでいた幼い頃の日々。
「大きくなったら幸ちゃんの嫁になる」
そう言っていた小さなお蝶の顔が幸助の胸に蘇る。
聞けば本所から深川へと宿替えをするので、幸助に別れの挨拶をしにきたというのだ。
お蝶の家は蝋燭屋だったが、店が潰れたのだと幸助は察した。
これから深川門前仲町の料理屋で女中として働くというお蝶を、
身体に気をつけろと言って、幸助は見送る。
ただそれだけのことを言うためにお蝶は遠い道のりをやってきた、
帰っていくお蝶の痩せた後姿に幸助は胸を衝かれ、後を追いかける。
そして5年経ったら年期が明けるから、
小名木川にかかる萬年橋で必ず会おうと幸助はお蝶に言う。
何度もうなずくお蝶の頬に涙が伝わった。
だがその日、萬年橋のたもとで待つ幸助の前に、
約束の刻限を過ぎてもお蝶は現れない。
その頃お蝶は……

お蝶は5年の間に父母の病気が重なり、
身体を売る酌取り女中に身を落としています。
素直には約束の場所には行けない。
幸助の方も親方の妾との出入りもあって、
内心お蝶に会わす顔が無いと思っている。
ふたりには空白の歳月があるわけですから、
どういうふうに身の上が変わっているか分からない。
幸助にはお蝶が約束なんかとうに忘れているのかも知れない、
と思う気持ちもある。
そういうふたりが、
あれこれお互いの身の上や自分の心を量りながら、
待つか、行くかで思案する。
約束の橋は同時にふたりにとって、
清新な5年前へと遡るために渡る心の橋なんですよね。
最後に幸助はお蝶の今の姿を知っても、
その心の橋を渡って、お蝶の許にやってきます。
この最後、なんか胸が詰まります(笑)

「殺すな」

腕のいい船頭の吉蔵は船宿の女将お峯と駆け落ちする。
隠れ住みながらの甘い生活が何年か続いたが、
最近お峯がふさぎ込みがちなのを吉蔵は心配していた。
お峯は吉蔵に言って、転々と引っ越しを繰り返していたが、
その引っ越しのたびに、お峯が元いた川向こうの船宿に、
だんだん近くなるのを吉蔵は訝しんでいた。
里心がつき、大川にかかる永代橋を渡って、
元の亭主のところへ戻ろうと考えているのでは無いかと考えた吉蔵は、
長屋の隣で筆作りの内職をしている浪人者の小谷善左エ門に、
お峯を手伝わす代わりに、
それとなく見張ってくれと頼んでいた。
そんなある日、船で送るように頼まれた吉蔵は客の顔を見てギョッとする。
客はお峯の元の亭主である船宿の主人、利兵衛だった。

転々と隠れ住みながら一緒に暮らす愛欲の日々、
その果てに吉蔵とお峯は気持ちのすれ違いを感じ始めます。
吉蔵はお峯の身体と甘い生活に激しく執着し、
お峯はお峯で、
このままうだつの上がらない川船頭の女として一生を終わるのか、
という不安がいつも頭をもたげる。
うまく行くわけがありませんね。
こういうことって現代でも割とありがちな話です。
いわゆるふたりは不義者ですから、当時は命がけの話です。
もっとも江戸には町人の不義密通は七両二分といって、
お金で解決する道もあったようですが、駆け落ちとなると話は別でしょう。
ふたりをつなぐのは未来でも希望でもなく愛欲です。
その一点から逃れられず、執着もしている。
でもその執着の行く末が酷いものであることを、
浪人小谷善左エ門の告白が一挙に照らし出します。
「いとしかったら、殺してはならん」
最後に善左エ門の悲しみが吉蔵に伝わったとき、
吉蔵の恋ともつかぬお峯への執着が終わる。
この話、なんだかさりげなくて上手いですね。

江戸の河川に架けられた大きな橋は、
すこぶる人が集まる場所だったようです。
それで待ち合わせの場所としてよく使われた。
もちろん木橋ですが、
当時の架橋技術があれば、いくつも架けられたにも関わらず、
幕府の意向であまり架けられなかった。
江戸が外から攻め込まれた場合、具合が悪かったんですね。
だから立派な橋というのは、そうあるわけではありませんでした。
だから江戸の人々にとって、
橋に対する思い入れもいっそう強かったんだと思います。
渡るか渡らないか、そして佇むか引き返すか、
彼岸へ渡る橋の姿は、
人々にとって何かの大きな節目のようなものではなかったかと、
そう思います。
出会いにしろ、別れにしろ、
橋が象徴するものは、人生そのもののような気がします。
夜の橋、朝焼けに照らされた橋、小糠雨に煙る橋。
そんな橋で起こった十の出来事。
この小説は玄人受けする大人の短編集といった色合いでしょうか。

そのほかの収録作品

「小ぬか雨」
「思い違い」
「赤い夕日」
「小さな橋で」
「氷雨降る」
「まぼろしの橋」
「吹く風は秋」
「川霧」

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2008-11-18(Tue) 23:56| 藤沢周平の世界| トラックバック 0| コメント 3

コメント

橋ものがたり

 なんか時代小説にしか表現できない恋の切なさってありますよね・・・できることなら色町で浮名を流してみたい気もします・・・エントツ横丁じゃあ全然、色気ないですし。

2008-11-19(Wed) 17:45 | URL | 松ちゃん #-[ 編集]

私も本がだいすきです。

今度本のことをブログに書きます。

お暇なときに遊びに来てください^^


http://fivedollars.blog24.fc2.com/

2008-11-19(Wed) 22:57 | URL | DOLLARS #-[ 編集]

はじめまして

あし@から辿り着きました。
この本の書かれてある内容にとても興味を持って、ついamazonで購入してしまいました^^;
読んでみたい本がたくさんあります。是非今度参考にさせて下さい。

2008-11-20(Thu) 17:56 | URL | 直実 倫 #-[ 編集]

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