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時代小説、映画、JAZZ、それらを大人の楽しみとして愛でること。雨の夜の鴉のごとく、耳鳴りとともに日々の悪夢に苛まれつつも。

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人情の花-山本一力「いっぽん桜」

「いっぽん桜」
山本一力「いっぽん桜」
(新潮文庫)


山本一力2003年の短編集。
「桜」「萩」「忍冬」「朝顔」
それぞれの花に託した人情話は温かく爽やかです。
表題作もいいけど、土佐藩での話が印象的。
その作品に使われる方言に今回は格別なものを感じました。
方言のひびきに滲み出るほのぼのとした温かさ。
これは山本一力がすごく書きたかったものじゃないかと、
そう思いました。

「いっぽん桜」

深川の口入屋井筒屋は江戸でも指折りの大店である。
そこの頭取番頭をつとめる長兵衛の願いは、
ひとり娘が嫁入るまで、
娘と思う存分に花見がしたいというものだった。
そのために近郷の村からわざわざ一本の桜を買い取り、
自分の家の庭に植え替える。
だがその桜は毎年咲くとは限らないといういわくつきの桜だった。
そんな長兵衛が、ある日井筒屋の主人重右衛門から料亭に誘われる。
そこで重右衛門が打ち明けた話は、長兵衛にとっては驚くべきものだった。
店を息子に譲って引退する。ついてはこの際、
店の切り盛りを思い切って若い者に任せたいので、
長兵衛にも自分と同時に勇退して欲しいという。
主人がそういう以上黙って従うしかない。
その日から長兵衛の失意の日々が始まる。

この短編はリストラの話なんですが、
ただのリストラとは違って、
時流に乗り遅れないために古い体質を一掃し、
会社が若返りを図る。現在でもよくある話です。
それでも本人にとってはリストラにかわりありません。
店の身代を大きくしてきたのは自分だという自負もある。
はじきだされる長兵衛としては到底納得できない話です。
そういう気持ちのまま、再就職するとどうなるか。
井筒屋と取引のあった小さな魚卸の店に勤め始める長兵衛。
未練を残しているものですから、
帰属意識はまだ井筒屋にあり、以前のやり方も押し付ける。
当然いろいろ軋轢が起こります。
こういう人、結局馴染めなくてまた辞めちゃうんですね。
普通だったら。
疎まれ、孤立したと思っていた長兵衛。
でも仲間たちの本当の気持ちを知る機会がやってきます。
長兵衛の家の庭に植え替えられた一本の桜があります。
果たしてその桜が家の庭に無事根付くかどうか、
その姿が長兵衛に重なります。
最後の長兵衛の後姿がいいですね。
人情の温かみが心に沁みる一編です。

「萩ゆれて」

兵庫は傷を癒すために、
土佐の浦戸湾沿いにある小さな村に湯治にきていた。
兵庫の父は病気の妻の薬代に困り、わずかな賄賂を受け取る。
そのために切腹させられることとなった。
兵庫はそのことを道場仲間に罵られ、
木刀試合を申し込んだが、逆に傷を負ってしまったのだ。
ある日兵庫は、蝮に噛まれた漁師の娘りくを助け、
りくの家族と親しく付き合うようになる。
りくの家族や村人と過ごすうちに、
やがて兵庫は武士を捨てて、漁師になろうと決心するが……

りくと結ばれた兵庫は結局魚屋をはじめます。
兵庫の母の志乃は病気で臥せっているのですが、
兵庫が武士の身分を棄て、
漁師の娘を嫁に貰ったことに憤り、
兵庫とりくに固く心を閉ざします。
土佐藩は他藩に較べ、とても身分制度が厳しかった土地です。
そういう土地で武士を捨てて、
魚屋になるというのはとんでもない話だったに違いありません。
武家の妻として生きてきた志乃にとっては、
許し難いことだっていうのは良く分かります。
でもその頑なな志乃の心もやがて氷解する日が来ます。
無心に尽くす嫁の優しさと健気さが、
志乃の心に届くその日。
このくだりはかなりジワッときます(笑)
ま、絵に描いたような人情ものといえばそうなんですけど(笑)
ところでこの小説で裏の主役は正調土佐弁ですね(笑)
山本一力が高知県出身だというのは有名な話。
この小説で駆使する正調土佐弁は見事です。
なんだか話しかける前からすでに心がニコニコしているような、
そんな優しさを感じます。
方言というのは、
あらかじめ人情を内包した言葉だというのが良く分かります。

山本一力の小説というのはあんまり悲劇は起こりません。
まあ人情小説だから、といってしまえばそれまでですが、
読むときの安心感という点ではやはり悲劇は起こらないほうがいい。
読後に温かい人のぬくもりを感じ、
捨てたもんじゃないんだ人生は、
さあ明日からまた元気にやっていこう。
そう感じさせるのがやっぱりこのジャンルの、大きな存在価値かもしれませんね。

そのほかの収録作品

「そこに、すいかずら」
「芒種のあさがお」

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2008-11-23(Sun) 02:12| 山本一力の世界| トラックバック 0| コメント 0

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