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時代小説、映画、JAZZ、それらを大人の楽しみとして愛でること。雨の夜の鴉のごとく、耳鳴りとともに日々の悪夢に苛まれつつも。

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介護侍の愛-藤沢周平「たそがれ清兵衛」

「たそがれ清兵衛」

藤沢周平「たそがれ清兵衛」
(新潮文庫)


たそがれ清兵衛という名前は時代小説のファンならずともよく知られています。
歴史上の人物それ以外の侍で、
これほど広く名前が知られている人は他には見当たりませんね(笑)。
これはまあ山田洋次監督の映画「たそがれ清兵衛」のおかげでしょう。
映画「たそがれ清兵衛」はこの作品集に収録されている「たそがれ清兵衛」「祝い人助八」そして「竹光始末」という短篇、この3作品がベースになっています。
最初にこの映画を観たときはちょっと驚きました。
舞台となっている庄内地方の風景や言葉、着物や髷、
そして登場人物の物腰まで、
そのすべてのたたずまいに深い陰翳がある。
なによりも想像できうる限りの時代の雰囲気。
それが良く出ていました。
それは時代考証の恐るべき確かさ、
おそらくこれに支えられてのことだと思います。
藤沢周平と山田洋次。
映画「たそがれ清兵衛」はこのふたりが出会ったことの幸福を感じた映画でした。
山田洋次監督の時代劇3部作の中では、
個人的には「たそがれ清兵衛」が一番好きです。
この作品集は昭和58年から昭和63年まで、
小説新潮に掲載された8つの短篇が収められています。
少し秘剣シリーズと共通するところもありますが、
不名誉な綽名や特異な風貌で侮られている侍たちの、
ここ一番にふるう一刃、そして愛。
秘剣シリーズとはまた違った味わいのある作品群です。

「たそがれ清兵衛」

勘定組五十石の平侍、井口清兵衛は、
下城の太鼓が鳴るとすぐさま帰り支度をはじめ、
いつもそそくさと帰ってしまう。
同僚たちとの付き合いもせず、
たそがれ時になると早々と家路につく清兵衛を、
家中の者は「たそがれ清兵衛」と綽名していた。
清兵衛が下城の太鼓と共に早々と帰宅するのには理由があった。
妻の奈美が労咳を病み、長い間床に臥せっていたからだった。
清兵衛は道々に夕餉の買い物を済ませて帰宅すると、
臥せっている妻の奈美を抱え、厠に連れて行く。
奈美は清兵衛が帰宅するまで厠を我慢して待っているのだ。
それが済むと家の掃除や夕餉づくりに立ち働く。
夕食を終えると奈美をもう一度厠に連れて行き、
それから内職に励むのだった。
清兵衛は奈美を湯治に連れて行きたいと考えていた。
それには今少し金が足りない。
それを思って清兵衛は夜が更けるまで内職に精を出す。
そんな清兵衛がある日家老の杉山頼母に呼ばれる。
用件は今度の重職会議のあと、
専横が目に余る筆頭家老堀将監の上意討ちを命じるというものだった。
清兵衛は無形流の達人でもあった。
だが清兵衛は重職会議のある時刻は妻を厠に連れて行かなければなりませんと言って、その命をいったん断るのだが……

清兵衛は「たそがれ清兵衛」などと侮られながら、
いわば立派な介護侍です。
この小説の面白さというのは藩の大事である上意討ちと、
妻を厠に連れて行くという介護侍の価値観が拮抗するところにあります。
要するに死を賭ける上意討ちと厠(笑)
清兵衛は当然妻を厠に連れて行く方を取ります。
奈美は清兵衛が帰るまで厠を我慢して待っているわけです。
清兵衛はそのことの切なさをよく理解しているし、
本当はずっとそばにいてやりたいとも思っているでしょう。
奈美は両親に死なれて五歳のときに清兵衛の家にやってきて、
妹同様に育っています。
紆余曲折あって清兵衛の妻となった。
肉親でありながら妻であるという奈美に対して、
清兵衛は二重の深い愛情を抱いている。
本当にかけがえのない存在なんですね。
家老杉山は上意討ちは奈美の厠を済ませてからでいいし、
成功の暁には奈美の病に対しても援助すると申し出て、
結局清兵衛はその条件を受け入れて上意討ちに臨みます。
全部妻の奈美のためです。
介護侍の価値観が上回る(笑)
最後湯治に行った奈美を清兵衛が訪ねていきます。
清兵衛がその村はずれにさしかかると、
村の入り口の一本の松の木の下にずっと立っている女がいる。
奈美です。
清兵衛が来るのをずっと待ってたんです。
なんという夫婦愛。涙が出ます(笑)

「祝い人助八」

御蔵役伊部助八は家中の者から「ほいと助八」だの
「ほいとの伊部」だとか陰口を叩かれている。
ほいととは物乞いのことである。
実際助八はかなりうす汚れている。
衣服は垢じみ、身体からは異臭が漂ってくる。
それもこれも原因は助八が妻を亡くしたためだった。
家中の者の中にはいつも薄汚れている助八に同情するものもいた。
だが事の真相はそうではなかった。
亡くなった妻の宇根は恐るべき悍婦だった。
宇根は100石という家柄の実家をいつも鼻にかけ、
とにかく口やかましく、
助八のやる事なす事そのすべてに宇根の叱責が絶えることは無かった。
その宇根が亡くなったことで、
助八は思いもかけない開放感を味わっていたのだ。
宇根から叱責を受けることも無いので、
助八は気随気ままに、
放埒でだらしの無い生活を楽しんでいたのだ。
そんな助八にある日幼なじみの倫之丞の妹、
波津が訪ねてくる。
しばらく見なかった波津は臈たけた美しい人になっていた。
波津は御番頭の甲田家に嫁入ったが、
夫の豊太郎が乱暴者で実家に帰ってきていた。
波津を家まで送った助八は、居合わせていた甲太郎が、
倫之丞に果たし合いを申し込むのを聞き、
代わりに受けることになるが……

この「祝い人助八」は映画「たそがれ清兵衛」の主筋となっているので、
物語はいまさらですが、ざっと書きます(笑)
助八は香取流の跡目です。
でもだれも剣や木刀を握っている助八を見たことがない。
こ汚いですし、誰もがまさかと思ってる(笑)
でも波津をめぐっての甲太郎との果たし合いで、
その剣がスゴイという評判が立ち、
清兵衛と同じでまた上意討ちにかり出される(笑)
それもその上意討ちの命を断れば、
甲太郎との果たし合いを私闘と見なし、
処罰すると半分脅されながら(笑)
死地に赴く助八を身繕いをして送り出す波津。
その波津に助八は結婚を申し込むのですが、
すでに波津は縁組が決まっていた。
諦めて上意討ちに向かう助八。
ともすれば挫けそうになる心を励まして。
何時間にも及ぶ死闘を制して、
助八がぼろぼろになって帰ってくる。
誰も居ない家が待っているだけかと思いきや、
家の前の暗がりから、
黒い人影が下駄を鳴らして駆け寄ってくる。
波津でした。
命がけで出かける男と思いがけなく待っている女。
使い古されたような場面ですが、
なぜか藤沢周平の小説に限っては、
妙に不変の切なさを感じます。

この短編集の主人公たちは、
その外見や行動から不名誉な綽名を付けられています。
でもそんな不名誉な綽名からは想像もつかない剣技の冴えを見せ、
死地を乗り切っていく。
同じような構成を持つものに秘剣シリーズがありますが、
こちらは綽名の由来からおこるなんともいえないユーモア、
そして綽名によって貶められている侍たちが見せる剣の力量
この落差がなんともいえませんね。
書きませんでしたが、
初老の星「ど忘れ万六」なんかもかなりいい味出してます(笑)
短篇なのに主人公たちの存在感や彫りの深さが際だち、
何度読んでも美味しい短編集です。

そのほかの収録作品

「うらなり与右衛門」
「ごますり甚内」
「ど忘れ万六」
「だんまり弥助」
「かが泣き半平」
「日和見与次郎」

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2008-12-22(Mon) 19:59| 藤沢周平の世界| トラックバック 0| コメント 2

コメント

はじめまして。 足跡から何度かご訪問いただいているようで、伺いました。こちらのたくさんの記事に驚いています。陽炎以外知らないですし、音楽もかなり自由きままな私ですが、訪問いただいたこと嬉しく思います。有難うございました。

2008-12-24(Wed) 13:17 | URL | 天 音 #-[ 編集]

あしあと!ありがとうございます!

お礼のポチットしておきました!

2008-12-25(Thu) 08:49 | URL | ルース #FfhjjlQo[ 編集]

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