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時代小説、映画、JAZZ、それらを大人の楽しみとして愛でること。雨の夜の鴉のごとく、耳鳴りとともに日々の悪夢に苛まれつつも。

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いのち永代、恋せよ深川-宇江佐真理「深川恋物語」

「深川恋物語」


(集英社文庫)
宇江佐真理「深川恋い物語」

1998から1999年にかけて「小説すばる」に掲載され、
2000年に第21回吉川英治文学新人賞を受賞した宇江佐真理の作品集です。
思わず唸ってしまうほどの作品揃い。
どの作品もそれぞれに素晴らしい出来だと思います。
なによりも物語に描かれている人々が生き生きとして、
物語が生気を帯びてます。
もともと宇江佐真理は江戸の雰囲気を描くのはとても巧みですが、
物語としてはあれっと思うような、
残念な終わり方するような作品もあります。
正直言うと群を抜くストーリーテラーというわけじゃない(笑)
それがこの作品集はちと違います。
何かが乗り移ったかのような、描写も筋もすこぶる付きの上手さです(笑)
本の表題は「深川恋物語」とありますが、
物語は恋の話ばかりじゃなく、
胸温まる話、切なくほろ苦い話など、
深川に生きる人々の哀歓が綴られた、まさしく珠玉の作品集。

「下駄屋おけい」

永代橋近くの深川佐賀町にある太物屋、
伊豆屋のひとり娘おけいは大の下駄好きである。
伊豆屋の向かいに下駄清という小さな下駄屋があり、
そこに働く口の利けない下駄職人、
彦七の造る下駄がおけいのお気に入り。
下駄清のひとり息子巳之吉はおけいの幼なじみ。
その巳之吉がこの春家から十五両という大金を持ちだして居なくなった。
居なくなってはじめておけいは巳之吉への想いに気づく。
おけいは深川中を探し回るが、ついに巳之吉は見つからない。
おけいのもとには大店の履物問屋から縁談が来ていた。
おけいは巳之吉を諦めて嫁に行こうと決め、
彦七に最後の下駄を注文する。
おけいはむつかしい注文をつけたが、
いつもの彦七ならたちまち出来上がってくるはずなのに、
今回ばかりは何度手直ししても、
なかかおけいの気に入るものが出来上がってこない。
五度目の手直しで、やっと気に入ったものが出来上がってくる。
おけいは彦七に礼を言おうと、店から帰って行く彦七の後を追い、
とうとう家まで行く。
そこでおけいの見たものは……

収録作品のなかではもっとも宇江佐節が良く出ている作品です。
明るく、ほんわかコミカル(笑)
上質のコミックを読んでいる感覚さえします。
おけいの厄介な注文の下駄を拵えていたのは、
じつは女にだまされた後、深川に舞い戻り、
彦七の家でひそかに下駄作りの修行をしていた巳之吉でした。
巳之吉は注文主がおけいとは知らず、
一生懸命下駄を拵えていたわけです。
おけいと巳之吉の会話がいいですね。
最後はほほえましいハッピーエンドで終わります。
大川端の佐賀町。その川べりの町にある大店の太物屋と、
向かいにある小さな下駄屋。
そのふたつの家にほがらかな陽光が差し、
大川の川面もきらきら照り映えている。
そんな感じの物語ですね。

「さびしい水音」

小さい頃から絵を描くのが好きだったお新。
亭主である大工の佐吉は、
お新の父親に絵を描くのだけは大目にみてやってくれと言われていた。
お新は佐吉に内緒でおもちゃ絵の内職をしていた。
そのことが佐吉に知れると、
じつはもっと描いてくれと頼まれていると打ち明ける。
家のことも手を抜かないお新に佐吉は理解を示す。
お新のおもちゃ絵は評判になり、
そのうち画集を出さないかという話が舞い込み、
お新は画集を完成させる。
その画集は思わぬ評判を呼び、
お新のもとには大勢の版元が押しかけて、
注文は引きも切らなくなった。
ふたりは裏店を出て、表通りに一軒家を借り、
家の中のことも人を雇って任すようになった。
羽振りの良くなった二人、お新は着物を揃え、
佐吉は下の者に酒や飯を奢るようになっていく。
そのうち怪我をして働けなくなった佐吉の兄、
貞吉の嫁のお春が頻繁に金の無心に来るようになっていた。
だが、きちんとした師匠についていなかったお新は、
たちまち仕事に行き詰まる。
ふたりの生活費やお春の無心に耐えかね、
お新はある絵の注文を受けることに。

結局お新がわじるし(春画)を描くことをきっかけに、
佐吉とお新は別れることになります。
お新は絵を描くことは好きだが、
絵の仕事をこなしていくことに、どこか自信が持てない。
それにこの時代は、絵師や戯作者でもちょっと目立つことをすると、
すぐに手鎖の刑ですから、そういうのも怖い。
生活は派手になり、お春からは遠慮のない無心もくる。
一方佐吉はちゃっかりお新の稼ぎを当てにしているところもある。
理解があるようで、要するに普通の男なんですね。
まあ、こういうふたりですから、万事がコントロール出来なくなっていき、
心がどんどんすれ違っていきます。
そのすれ違っていく心の過程、その描写がとても上手い。
表題の「さびしい水音」というのは、お新が佐吉と別れてから出した画集、
その中にある一枚の絵の題名です。
深川の堀に架かる橋の上から、
堀をじっと覗きこんでいるひとりの男の絵です。
そのさびしい水音を聞いていたのは、
果たして佐吉だったのか、お新だったのか。
ラストまで気合いのこもったとてもいい小説です。
ま、宇江佐真理も主婦で作家ですからね。
いろいろあるかも知れないですね(笑)

「狐拳」

深川三好町の材木問屋信州屋の内儀おりんは、
長男の新助の吉原通いに手を焼いていた。
吉原の大黒屋にいる振袖新造、小扇に惚れての吉原通いである。
おりんももとはといえば深川の芸者あがり。
強くも言えなかった。
おりんは信州屋の後添い。
新助は亭主の竹次郎の連れ子である。
おりんは二十歳のときに子を産んだが、植木屋の夫婦に貰ってもらった。
そのぶん新助を大事に育てた。
亭主の竹次郎に相談すると、
竹次郎は小扇を身請けして新助の嫁にすればいいとあっさり言う。
おりんは反対したが、やがて小扇は身請けされ、
いったん知り合いの家に世話になることに。
しばらくして嬉しいはずの新助が浮かない顔をしている。
おりんが問いつめると、小扇が信州屋の嫁にはならないと言っているという。
おりんはさっそく小扇に会いに行くが……

最後はなにやら温かいものがこみ上げてくる物語です。
小扇はじつは捨てたはずのおりんの娘、おふくでした。
金に困った植木屋の夫婦に、吉原に売られたのです。
それをおふくから聞かされて卒倒するおりん。
ようやく信州屋に来たおふくに、おりんは語ります。
新助とうまく行かないとなったら、わっちと一緒にこの家を出るしかない。ただの嫁じゃない。わっちの娘だもの。そうするしかないだろう?
親子とか、家族とかそういうものに囲まれて暮らす幸福を、
かけがえのないこととしてしみじみと感じさせてくれます。
狐拳はラストにおりんと小扇が賑やかにやる、
藤八拳、庄屋拳とも呼ばれるじゃんけん遊びに似た拳遊び。
お座敷遊びとしてとても流行したそうです。
歌麿が描いた浮世絵「狐拳三美人」なんかでも有名ですね。

このほかにもスイカの凧をどうしても空に揚げたかった小さな娘。
だがその願いが叶う前に亡くなってしまう。
そのせめてもの供養に、
思いをこめて青い空にスイカの凧を揚げる「凧、凧、揚がれ」
思わず泣いてしまいます。
これが一番好きかもしれません(笑)

この小説、深川のあちこちの地名がたくさん出てきます。
時代小説の市井ものは江戸の深川という場所が舞台になることが多い。
宮部みゆきも時代小説「本所深川ふしぎ草紙」で、
同じように吉川英治文学新人賞を受けてますから、
深川を冠すればこの賞はまず間違いはないかと。
そんなことはないか(笑)
とにかく深川という場所、時代小説ではメッカですから、
いろいろ読んでいるうちに、自然と橋やら町名やら覚えてしまいます。
後は自然と江戸切絵図。場所を確認したくなるのは人情です。
古地図を片手に時代小説を読むというのは、
またひと味違った楽しみがあります。
最近ではgooが古地図のサービスをしてますから、
お手軽にその楽しみが味わえます。
興味をもたれた方はぜひ。

そのほかの収録作品

「がたくり橋は渡らない」
「凧、凧、揚がれ」
「仙台堀」

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2009-01-22(Thu) 18:01| 宇江佐真理の世界| トラックバック 0| コメント 2

コメント

今では見られなくなった情がじんわり伝わってきます。切なくて、さっぱりした感情も、その時代ならではなのでしょうか。

2009-01-25(Sun) 00:18 | URL | ふわネコ #-[ 編集]

Re: タイトルなし

たしかに時代が写す情はあるでしょうね。
でも時代小説は現在に書かれ、
ふわネコさんのようにそれに情や切なさを感じる人がいるのですから、
江戸時代からそれほどに隔たってはいないと思いますね。

2009-01-25(Sun) 00:53 | URL | -rainbird- #-[ 編集]

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