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時代小説、映画、JAZZ、それらを大人の楽しみとして愛でること。雨の夜の鴉のごとく、耳鳴りとともに日々の悪夢に苛まれつつも。

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しぐれ町の普通の人々-藤沢周平「本所しぐれ町物語」

「本所しぐれ町物語」

藤沢周平「本所しぐれ町物語」
(新潮文庫)


この本は藤沢周平としては珍しい試みで、本所しぐれ町という架空の町を舞台にした市井ものだ。連作の形で書かれていて、しぐれ町の住人がそれぞれの短篇に主役として、あるいは脇役として作中に顔を出す。短編集というよりは連作集か。でもしぐれ町を主人公とした長編小説とも読める。
べつだん事件らしい事件も起こらない。いつの世でも、またどこにでも起きそうな日々の、さざ波のような出来事が淡々と綴られる。
しかしヒーローも特徴的な人物もいないかわりに、端正な筆でここに書き込まれた人物たちは平凡であるがゆえにかえって陰影が深い。

「鼬の道」

「鼬(いたち)の道」は上方を食い詰めて舞い戻ってきた弟に転がり込まれて、その去就にやきもきする兄の物語。その兄の心理が妙に身につまされる。
十五年も前に、江戸でなにか危ないしくじりをやらかして上方に逃げ、長い間音信不通だった弟の半次が上方も食い詰めたらしくひょっこり江戸に舞い戻ってくる。うわべでは真っ当の暮らしをしろと説教し、仕事につかせようとあれこれ算段している兄の新蔵だが、その心の奥底では弟を疫病神のように思っている自分に気づいている。
案の定半次は仕事にもつかず、ぶらぶらしているばかり。新蔵の不安はますます募る。
ある日過去にしでかした不始末の事で、やくざに追われた弟が、やはり江戸にも居場所が無いと知り、仕方なくまた上方へ戻ると言う。それを聞いてなぜか安堵する兄。
ラストは上方に立つ弟を見送った兄が、ほっとした気持ちと同時に、もう弟はこの江戸に帰ってこない。もう二度と会えないのだと気づいて呆然とする場面で終わる。
鼬は二度と同じ道を通らない。鼬の道とは行ったきりでつきあいの絶えることをいう。新蔵は唯一の肉親である弟にもう二度と会えないのだ。たとえそれがどんな弟であろうと。
弟の半次はどうしようもない人間だが、藤沢周平は決して排除はしていない。
二度と会うことがないと知ることで、半次はかけがえのない肉親なのだと気づく新蔵の心中でそれは表現されている気がする。

「約束」

「約束」は博打やらなにやらで、あちこちに借金を残して死んだ、飲んだくれの父親のかわりに、自分を女郎屋に身売りしてその借金すべて払ってしまう十歳のおきちの物語。
こう書くだけでもかなり悲惨な物語という気がするが、読んでいてあまりそういう感じはしないのはなぜか。おきちがあまりに健気でしっかりしているせいなのだろうか。
この作品に登場する人物たちにあくどい者はひとりもいない。博打の借金を取り立てにきた者も、金貸しの婆さんも、おきちが身売りを持ちかける女衒も、誰ひとり悪人はいない。それどころか誰もが本気でおきちの行く末を心配しているところがある。おそらくこの物語が悲惨なイメージを免れているのそのせいだろうと思う。
おきちはこの本の別の章で、大店の旦那に苦界から救い出される。おそらくそうなるんだろうな、いやそうなってほしいと、予定調和の願いみたいなものに読んでいてとらわれる。おきちの周りの善意がそう感じさせるのだろう。
この「本所しぐれ町物語」に登場する人々は、日頃わたしたちの身の周りにいて、なにげに暮らしている普通の人々と同位相にいる。人は善である。ただ心弱き者であるだけだ。藤沢周平はそう言っている気がしてならない。

素人の想像ですが、ある架空の町を設定し、そのなかで生きる人物の相関やら出来事やら、そういうのを考えていくのは、さぞや楽しい作業じゃないかなと思ったりする。一度でも小説を書こうと思い立ったことのある人なら、そういう楽しさはわかると思う。あくまでも小説を書く労苦は脇に置いといての話ですが(笑)

そのほかの収録作品

「猫」
「朧夜」
「ふたたび猫」
「日盛り」
「秋」
「春の雲」
「みたび猫」
「乳房」
「おしまいの猫」
「秋色しぐれ町」

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2008-09-23(Tue) 20:20| 藤沢周平の世界| トラックバック 0| コメント 0

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