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時代小説、映画、JAZZ、それらを大人の楽しみとして愛でること。雨の夜の鴉のごとく、耳鳴りとともに日々の悪夢に苛まれつつも。

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哀愁の遠景に浮かびあがる人々-藤沢周平「夜の橋」

「夜の橋」

藤沢周平「夜の橋」
(中公文庫)


藤沢周平の小説、ことに短編小説を読むと、
内容とは別に、他の小説家では感じられない、
ある特別なものを感じる気がします。
特別な、そう、一種の哀愁のようなものでしょうか。
藤沢作品ではよく「雨」や「橋」「雪」の風景が使われます。
他にもそういうあらかじめ哀愁を含んだ風景が使われることが多いし、
藤沢周平自身も節度のある抒情へ、
自分を駆り立てる描き方をしている気もします。
小説は人間を描くものですから、
藤沢作品にも当然そういう風景のなかに人々がいます。
たとえばを陽光を往く人、雨にたたずむ人、
橋を往く人、雪にたたずむ人。
そこには何かしらの感情を胸に抱えた人々がいます。
時代を隔てた哀愁の遠景にぼんやり浮かびあがる人々の姿。
読者はその人々の人生を、
時代を隔て、遠景としてつかのま垣間見るわけです。
そしてそうやって垣間見るごとく読む側も、
なんだかそのこと自体、とても切ないような、そんな気になります。
それがある特別なものの正体ではないだろうか思います。
でもこれは他の時代小説家にはあまり感じたことはありません。
もちろんそんなのは自分だけであって、他の人はまた違うのかも知れません。
まあ、ファンというのはそういったものでしょうけれど。
さて「夜の橋」この短編集には何度読んでも泣いてしまう
「泣くな、けい」が含まれています(笑)
藤沢周平が50歳前後に書かれたものが集められ、
市井もの、武家ものが混在している短編集ですが、
今回はなんだか女の生き方がいろいろ。

「夜の橋」

腕のいい錺職人の民次は博奕にはまったのがもとで、
女房のおきくと別れた。
うるさく言う者も居なくなった民次は賭場への出入りも頻繁になり、
今では盆の手伝いまでするようになっていた。
そんな民次のところへ、ある日おきくが訪ねてきたと、
隣家の女房が知らせてくれる。
民次は気になっておきくが勤めているという飲み屋に行った。
民次と会ったおきくは、
あたしを嫁に欲しいと言っている薬種問屋の番頭がいるのだが、
お前さんはどう思うかと聞かれる。
民次はそれはいい話じゃないかと答えたが、内心穏やかではなかった。
しばらくして、出入りしている賭場でおきくの言った薬種問屋の番頭、
兼吉を見かけた民次は、
兼吉の様子が、およそ堅気の番頭とはかけ離れていることに気づく…

夫婦再生の物語ですね。
性根を入れ替えない元の亭主を、
諦めきれないで待っているおきくの心根に、
しみじみと胸打たれます。
おきくの相手である兼吉が、不相応な大きな金を張り続け、
博奕にどっぷりと浸かっていることを知った民次は、
兼吉が店の金にまで手を出しているのではないかと疑い、
兼吉を待ち伏せ、おきくから手を引くように脅します。
それには成功しますが、思いもかけない落とし穴が待っています。
ある事件の罪を引き被れと、賭場の胴元に無理強いをされる民次。
それを頑として聞かなかった民次は半殺しの目に遭います。
這うようにしておきくの店近くの橋に辿り着く民次。
それを見つけたおきく。
傷ついた民次を抱えて言う、おきくの最後のセリフがとてもいいです。
夜の橋をよろけながら遠ざかっていく二人の姿が印象的です。

「泣くな、けい」

相良波十郎は、ある夜、女中のけいを手籠めにする。
妻は病気療養で留守だった。
けいは強情な涙ひとつこぼさない娘で、
波十郎がこのことは誰にも言ってはならんと、
口止めすると、部屋の隅で涙も見せずひっそりと頷いた。
けいが相良家に奉公に上がったのは十五のときだった。
目ばかりが大きい浅黒い娘だったが、
武家での奉公は三年の間にけいを娘らしく成長させていた。
次の日、妻が亡くなったとの知らせが入る。
妻の葬儀も済んだしばらく後、
御納戸役の波十郎は藩主の家宝である短刀が無くなっていることに気づく。
上役の命で波十郎が研ぎに出した後、行方不明になっていたのだ。
波十郎は短刀の行方を追うが、けいが何かを知っているようだった。

家宝の短刀は亡くなった妻の浮気相手が、
城下の刀剣商に売ったことが判明します。
でもすでに隣藩の侍が買い求めた後でした。
波十郎は謹慎処分となり、隣藩に買い戻しに行けない。
そこで買い戻しの重大な役目をけいに託します。
初めは嫌がったけいも、
短刀が戻らなければ切腹という波十郎の頼みを聞き、
波十郎から百両を預かると、隣藩へと旅立ちます。
でもけいはそれからまるで消息を絶ったかのように
待てど暮らせど帰ってきません。
もうこれまでかと思ったとき、
けいが物乞いのような姿で帰り着きます。
そして刀を取り戻したことを波十郎に報告すると、
堰を切ったように号泣します。
じつはけいが訪ねていった隣藩の侍は江戸詰となり、
すでに旅立った後でした。
けいはそれを追い、遙か江戸まで行きます。
十八の娘が三百里の道をたったひとりで往く。
それも百両の金や家宝の短刀を抱えながら。
辿り着いた途端、心細さを思い出すように号泣し、
いつまでも泣きやみません。
その一途さとけなげさに、
思わず物語だということを忘れ、涙せずにはいられません。
なぜこんな物語が思いつけるのでしょう。
けいはずっと波十郎が好きだったんですね。
たまりません(笑)

「暗い鏡」

鏡研ぎの親方である政五郎には、
たったひとりの姪であるおきみがいた。
政五郎の弟、清七の娘だが、清七も女房も早くに亡くなり、
身よりのないおきみを政五郎が引き取って育てた。
政五郎はだらしのない清七にさんざん迷惑をかけられていた。
そのせいかおきみにはあまり構わず無関心だった。
おきみは早くに政五郎の家を出て、女中奉公をはじめる。
それ以来政五郎の家にはあまり寄りつかなかったが、
政五郎は気にもしなかった。
おきみは不器量で、嫁にもいかずすでに二十八になっていた。
そのおきみが、ある日殺されたという知らせが入る。
駆けつけた政五郎に信じられない事実が告げられる。
おきみは場末の娼婦で、客に殺されたというのだった。
女中奉公をしていたはずのおきみが、なぜ娼婦にまで落ちていたのか、
納得のいかない政五郎は、おきみの足跡を辿りはじめる。

たったひとりの姪であるおきみに、あまりにも冷淡だった、
胸を噛むような後悔に苛まれながら、
政五郎はおきみの転落の人生を追います。
そこに浮かび上がってくるのは、淋しいひとりの女の生涯です。
わずかな身内に頼ることも憚り、孤独を胸に抱えて、
性悪な男にすがって生きるしかなかったおきみの人生の、
惻々とした哀しみが迫ってきます。
死んだおきみの部屋には、
政五郎が気まぐれにやった手鏡が、
大事に置かれていました。
その暗い鏡は、
おきみの人生の何を映し出していたのでしょう。

「夜の橋」の後書きで、
藤沢周平は短編小説は仕上げてみるまではどうなるかわからない。
賭博のようなものだと書いています。
たしかに短編小説を書くという行為は、
とてもスリリングな行為なんだろうなと理解できます。
今回はネタバレを通り越して、ほとんどダイジェストになってしまいました(笑)
読むという行為も、書くことに劣らずスリリングであるとしたら、
この読書録はかなりぶち壊しです。
ご容赦を(笑)

そのほかの収録作品

「鬼気」
「裏切り」
「一夢の敗北」
「冬の足音」
「梅薫る」
「孫十の逆襲」

(もっと書評を読んでみたい方はこちら)
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2009-03-02(Mon) 15:48| 藤沢周平の世界| トラックバック 0| コメント 3

コメント

ご訪問ありがとうございます。
ランキング、ポチしますね。

2009-03-02(Mon) 18:34 | URL | ゴーヤー男 #-[ 編集]

こんちわ~~ どうもです~~
ポチ友になりませんか~~
っと、ポチッと

2009-03-02(Mon) 20:20 | URL | sally b #-[ 編集]

遠景として、なるほど。

時代小説は、その時代を筆者の観点から風情豊かに、一人の人間の感情を丁寧に、ゆっくりと時が進む表現が好きです。 登場人物の感情を自分に置き換えて涙する。 rainbirdさんのお陰で、興味がいっぱいです。

2009-03-02(Mon) 23:19 | URL | ふわネコ #-[ 編集]

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