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時代小説、映画、JAZZ、それらを大人の楽しみとして愛でること。雨の夜の鴉のごとく、耳鳴りとともに日々の悪夢に苛まれつつも。

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逆上する武士道-佐藤雅美「槍持ち佐五平の首」

「槍持ち佐五平の首」

佐藤雅美「槍持ち佐五平の首」
(文春文庫)


佐藤雅美はかなり薀蓄の人である、とそう思います(笑)
小説の序盤でお構いなしに延々と薀蓄傾けたりします。
じれったいぐらいなかなか本題に入らない(笑)
事実かなりの博識で、あの奇怪きわまりない江戸幕府の職制や、
江戸の経済にもよく精通しているようだし、
「居眠り紋蔵」シリーズでは江戸幕府の実法
「公事方御定書」なんかも駆使してます。
今回はそんな佐藤雅美の面目躍如といった感のある、
「槍持ち佐五平の首」という短編集です。
実際に起こった事件を題材に八つの短編が収められています。
だいたい時代は文化・文政の頃です。
この頃になると江戸時代も爛熟期。
大坂を中心に花開いた元禄とは違って、
江戸の町人が中心となって栄えた化政文化時代です。
武士はどうしていたかというと、江戸幕府開闢以来ずっと変わらぬ禄高と、
圧倒的な物価上昇のせいで貧苦にあえぎ、もう見るも無残(笑)
武士階級はすでに魂の抜け殻状態。
江戸幕府が衰退する始まりの時期であります。
そういう時代の話ですから、どうにもこうにも情けないというか(笑)
意地と愚かさは紙一重というか、
色と金と名誉欲に狂う煩悩武士のオンパレードです(笑)
実際の事件にちょこっと肉付けした程度の小説集などと侮るなかれ。
そういう武士の姿を通して、
佐藤雅美のじつにシニカルな目をいたるところに感じます。

「槍持ち佐五平の首」

相馬藩の絹川弥三右衛門は宿割役人であった。
参勤交代でお国許へ帰参する主君の行列を順調に進ませるため、
先乗りして宿場で、本陣の手配などを行うお役目だった。
今回も絹川弥三右衛門は供の者数人を連れ、
通り道にあたる奥州街道の大田原宿に先乗りして、
本陣の手配をつつがなく済ませた。
だがその夜、会津藩の宿割役人が現れ、
同じ日に会津藩の藩主が宿泊することになった、
ついては本陣を譲れと迫った。
会津藩は大藩。宿割役人の態度も権高だった。
絹川弥三右衛門は理不尽な要求に屈しなかったが、
宿場の問屋連中に迷惑がかかると知ると、黙って退いた。
会津の宿割役人に自分たちの宿も譲り、
しかたなく他の宿に移った絹川弥三右衛門に、
槍持ちの佐五平が先の宿に槍を置き忘れてきたと言う。
佐五平は五十過ぎの日雇い人足だった。
取りに行ってこいと命ぜられた佐五平。
よろよろと夜道を先の宿へ引き返したが……

実際にはもっといろいろあったでしょうね、こういう事件は。
参勤交代で大名同士が鉢合わせするのは良くあることで、
ことに江戸市中でけっこうあった。
大名にも当然格がありますから、
それにしたがって先を譲ったり、やり過ごしたり。ホント大変です。
結局この家格というのが、上から下まで武家社会のキモだったわけです。
要するに上下関係。
これでイジメも起これば、妬み嫉み、蹴落としや足の引っ張り合いも起こる。
凄惨な争いの大きな種は、どうしても身分制度にならざるを得ません。
絹川弥三右衛門も大名の家格の違いで、
会津の宿割役人に無理押しされます。
とにかく槍を取りに行った佐五平。でも全然返してくれません。
素直に言うことを聞かなかった絹川弥三右衛門憎しで、
会津藩の役人の嫌がらせはますますエスカレートして、
取りに来るなら槍を置き忘れる粗相をした佐五平の首を持って来い、
とまで言われる。
ここで絹川弥三右衛門の堪忍袋の緒が切れます。
もはやこれまで、ここまで貶められたら、
後は相手を斬って、この恥辱をそそぐのみ、
こうなるともう前後の見境はありません。
キレる侍、逆上する武士道というわけです(笑)
絹川弥三右衛門は佐五平の首をはね、
それを持って会津藩の宿舎に行き、宿割役人をばっさりとやる。
ついでに向かってきた数人も切ってしまいます。
この事件その後はうやむやにされたみたいですが、
武士の意趣返しや愚かな意地のために、
とばっちりで首を切られた佐五平こそ哀れ。

「ヨフトホヘル」

冨士山に見立てた富士塚を立て、参詣する富士講なるものが流行ったとき、
自分の土地に富士塚を立て、ひと儲けを企んだ博徒上がりの半之助。
だが自分の土地に富士塚をたてようと思えば、
代官に賄賂を贈らねばならない。
しかし旗本が土地の持ち主であれば賄賂はいらない。
一計を案じた半之助は重蔵にその土地の名義貸しを頼んできた。
金を貰って名義を貸した重蔵だが、
そのうちこれは自分名義の土地だからといって、
勝手に家を建てて住み始める。
そして家を竹矢来で囲んでしまう。
その土地で商売を始めようとしていた半之助にとって、
重蔵の家と囲いは商売の邪魔でしかたない。
囲いを巡って重蔵と半之助に争いが起こります。
騒動は代官のところにも持ち込まれたが埒が明かず、膠着状態が続く。
悪だくみを案じた重蔵は、半之助を挑発して囲いを壊させ、
それを種に半之助の一家を皆殺しにしてしまえと、息子の富蔵に言い含める。
そして自分はアリバイを作るため家を留守にする。
案の定誘いに乗った半之助は富蔵に切り殺され、
一緒に家族や仲間7人が殺される。
しかし事は重蔵の思惑通りに運ばず、
捕まった富蔵は八丈島へと流され、
重蔵も連座で近江国大溝藩へと永預けとなる。

蝦夷や樺太の探検で、間宮林蔵などと共に知られる近藤重蔵。
神童と呼ばれるほど頭が良く、
幕府の役職も歴任した近藤重蔵ですが、
その性格はとことん悪かったみたいです(笑)
しかしまあ、これほどあっちこっちでモメ事起こしてるとは思わなかった。
ひどい親父もあったもんです(笑)
歴史上の有名人物ですし、
時代小説でも近藤重蔵は火盗改めなんかで主役ですからね。
そういうイメージがガラガラと音立てて崩れていきます(笑)
残された文献から類推したんでしょうけれど、
読む限りそんなに外れてない(笑)
この近藤富蔵の7人殺しは「鎗ケ崎事件」と呼ばれる事件。
小説では近藤重蔵の息子近藤富蔵もとんでもない悪玉に描かれています。
親父はもっとひどいですが(笑)
最近奥田瑛二 監督の「るにん」を見る機会があって、
松坂慶子が神々しい、なんて思って観てたんですが、
あの流人の中で、作家島田雅彦演じる近藤富蔵が、
この「鎗ケ崎事件」の富蔵なんですね。
実際の近藤富蔵は長い流人生活の中で、
八丈島の生活、歴史、文化、風俗を書いた「八丈実記」を著します。
全72巻にも及ぶという大著でした。
明治になって出版され、
柳田国男をして「近藤富蔵は日本における民俗学者の草分け」
とまで言わしめます。
小説の中の近藤富蔵とはだいぶイメージに開きがありますが、
23歳のとき八丈島に流され、
「八丈実記」を書いたのが40代から50代にかけてですから、
厳しい八丈島の流人暮らしでも、若い富蔵の罪を昇華させるのに、
それほどの時間が掛かった、ということかもしれませんね。
歴史は虚実のあわい。
この小説を読むと、だからこそ面白いと思ってしまいます。

他にも「徳川実記」に出てくる、
大胆にも通りがかりの農家の嫁を押して不義し(笑)
強淫大名と落首された浜松六万石、井上河内守正甫をめぐる
「色でしくじりゃ井上様よ」

度重なるいじめにとうとうキレた武士が殺傷事件を引き起こす。
西丸御所院御番で本当にあったいじめの話
「重怨思の祐定(かさなるうらみおもいのすけさだ)」など。
ちなみに祐定は殺傷に及んだ脇差の銘。

この小説集を読んでいると、
武家社会というのはいかに住みづらい社会であったかよく理解できます。
それにしても武士というのは危なくて仕方ない(笑)
昔も今もキレる人はいるわけです。それは変わりないと思う。
でも武士は常に腰に物騒なものをたばさねていたので、
キレる即殺人や傷害につながります。
考えてみれば、武士というのは一触即発の状態に、
常に身を置いていたということになります。
やはり尋常な世界じゃありません(笑)

そのほかの収録作品

「小南市郎兵衛の不覚」
「重怨思の祐定」
「身からでた錆」
「見栄は一日恥は百日」
「色でしくじりゃ井上様よ」
「何故一言諫メクレザルヤ」

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2009-03-09(Mon) 23:23| 読み捨て御免!| トラックバック 0| コメント 5

コメント

10GOOD!!


おもしろいですねww

また来ますぅ~♪♪
(≧∇≦)/☆彡

http://mogura99.net/mogu_s/6wwe8/

2009-03-09(Mon) 23:32 | URL | 美咲☆彡 #7di3CiSc[ 編集]

ポチOK

2009-03-10(Tue) 15:07 | URL | 田舎のオヤジ #-[ 編集]

あし@からきましたー。

本読むのは大好きですが、この分野は
あまり読みません(^^;

応援ポチしておきました。
また来ます。

2009-03-10(Tue) 23:37 | URL | 金猫の徹底検証!FX・日経225情報商材 #-[ 編集]

薀蓄

そうですそうです。
佐藤雅美って、薀蓄を傾けますよね。

2009-03-11(Wed) 16:39 | URL | ふくろう #kZB9b/iA[ 編集]

不正直な時代?

日本人特有の、本音と建前の間で
不幸にも命を落とした人たちが
歴史にも残っていますね。
後に引けぬ心情、後悔の念は 
同じ様に引き継がれている、日本人の
DNAを小説と共に感慨深く…≪苦笑≫

2009-03-11(Wed) 22:35 | URL | ふわネコ #-[ 編集]

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