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時代小説、映画、JAZZ、それらを大人の楽しみとして愛でること。雨の夜の鴉のごとく、耳鳴りとともに日々の悪夢に苛まれつつも。

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貴種と漂白の民-隆慶一郎「吉原御免状」

「吉原御免状」


(新潮文庫)


傑作です。正直にそう思います(笑)
じつは伝奇時代小説はどうも苦手で、
これは最初に山田風太郎を読んだのが悪かった(笑)
のではないかと思ってます。
(こんなこと書いたら山風ファンに怒られそうだけど(笑))
伝奇時代小説というのは、どうしてもある種の荒唐無稽さがつきまといます。
まして山田風太郎の作品というのはかなり奇想天外。
ま、そういう奇抜さに我ながら堪え性が無かったということでしょう(笑)
で、敬して近寄らず(笑)
伝奇時代小説そのものに食指が伸びなかった。
それが今回の隆慶一郎。
ご存知のとおりデビューが七十歳過ぎと遅く、
活動期間も5年と短かったけれど、彼も一時代を画した伝奇時代小説家です。
なぜ手に取ったかといえば網野善彦の本からでした。
「無縁・公界・楽」という本を皮切りに、独特な史観を展開した歴史学者ですが、
従来の日本史に民俗学的アプローチを試み、
非定住の人々である漂泊民の世界を明らかにしたその史観は、
とても刺激的でした。
最近ほったらかしで、
次第に無政府状態になりつつある書棚を整理しているときに、
その網野善彦の本を見つけ、ふと手に取った途端、
もう整理そっちのけで……(笑)
その網野善彦の史観を背景とした小説が、
この「吉原御免状」であると知り、今回読んでみたわけです。
いつもの人情ものや、武家社会の話とはまるで違う世界。
でもすぐにぐんぐん引き込まれ、それこそ物語を楽しみながら、
知の領域をも大いに刺激する二重の快楽に打ち震えました。
というわけで、この作家にやみつきになりそうな感じに今なってます(笑)
「吉原御免状」は隆慶一郎の記念すべき作家デビュー作です。

明暦三年八月十四日、
ひとりの青年剣士が江戸浅草日本堤に立っていた。
青年の名は肥後浪人松永誠一郎。
誠一郎の師は宮本武蔵政名である。
棄て子だった誠一郎は肥後の山中で武蔵に育てられ、
武蔵亡き後は、高弟の肥後細川藩士、寺尾孫之丞に託された。
その武蔵の遺言に、誠一郎が二十五歳になるまで山中を出すな、
二十六歳になった折りには、
江戸に行き、吉原惣名主の庄司甚右衛門を訪ねよとあり、
二十六歳になった今、誠一郎ははるばる江戸に出てきたのである。
奇しくもその日は新吉原が誕生し、営業初日の日だった。
衣紋坂に出た誠一郎が見る吉原は、
煌々とした明かりに浮かび上がる光の町だった。
そして一斉にかき鳴らされる「みせすががき」の三味線の音。
誠一郎は魅入られるように吉原へと入っていった。
だが、なぜか夥しい殺気が誠一郎を包み込む。
そして誠一郎は幻斎という不思議な老人と出会うのだが……

物語は庄司甚右衛門に遊里吉原の開業を許可した、
徳川家康の「神君御免状」を中心に展開されます。
吉原に腰を落ち着けた誠一郎に幻斎が水先案内人となって、
様々なことを教えていきます。
その過程を中心に、物語が進んでいくのですが、
次第に「道々の輩(ともがら)」と呼ばれる漂白の民の存在と、
遊里吉原成立の謎、誠一郎自身の隠された出自が浮かび上がってきます。
誠一郎は貴種であり、その貴種を吉原に戴くことで、
何事かをなそうとする幻斎の思惑。
そして幕府にとっては脅威となる「神君御免状」を奪還せんと、
柳生義仙率いる裏柳生が襲ってくる。
誠一郎と幻斎、そして二人を守る吉原の亡八や首代。
凶悪な裏柳生忍群との死闘が繰り広げられます。
チャンバラもかなり面白くて、迫力あります。
裏柳生はいつも悪者のような気がしますが(笑)
「神君御免状」に果たして何が書かれているか。
物語が進むにつれ、驚愕の事実が明かされていきます。
とまあじつにワクワクする物語が展開していく訳なんですが、
面白いのは幻斎を通して語られる、
傀儡子一族を中心とした漂白の民の記述、
狂歌や落首、バレ句など織り交ぜながら、
遊里吉原のしきたりや、そして遊里にまつわる様々な語源など、
小説のなかで語られながら、
なんだか民俗学の本でも読んでる気分になるほど、
知的好奇心を満足させるテキストがちりばめられています。
俗世から無縁の存在であり、
中世の頃から日本全土を自由に往来したといわれる、
山伏、傀儡師、巫女、陰陽師、忍者など、
「道々の輩(ともがら)」とも、
「公界(くかい)往来人」とも呼ばれた人々の興亡を通して、
日本の裏面史みたいなものが浮かび上がってくる。
こういうのって小説のなかに織り込まれるとすごく新鮮です(笑)
当然エンターテイメントですから、
吉原の有名な花魁、仙台高尾と誠一郎の交合の場面など、
エロチックな描写も多いです。
でもそういう民俗学的テキストの文脈に洗われて、
全然いやらしさがありません。
その証拠にまるで興奮しませんから(笑)
それよりもっと、
うっとりしてしまうような別種の快美に彩られている感じがします。
吉原の様式美やしきたりの描写がそうさせるのかも知れません。
この小説。小説でありながら小説では無いような、
どうにも不思議な感じです。
とにかく面白くて頁をめくるのが早くなる。
同時に残りの頁がとても気になって仕方ない(笑)
早く読みたいけど、めくる頁が少なくなってしまうのが惜しくて惜しくて(笑)
そんなジレンマに陥った久々の小説でした。
この「吉原御免状」の物語は、
後に書かれる「影武者徳川家康」や「花と火の帝」に密接に結びついています。
続刊「かくれさと苦界行」もぜひ読まなきゃと逸ってます(笑)

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2009-03-21(Sat) 03:42| 読み捨て御免!| トラックバック 1| コメント 7

コメント

結局のところ、

歴史の陰舞台を、表に出すと
表舞台がつまらなくなると思いきや、
表が一層豪華に見えるのかもしれませんね。
それよりも、日本の歴史の曖昧さを
解明してしまうドキドキ感も、もっと謎を深くする
ワクワク感もありそうです。
…でも時代小説は、現代に描かれている(笑)

2009-03-21(Sat) 19:35 | URL | ふわネコ #-[ 編集]

私もこれ大好きです!

この方の作品少ないのが本当に残念です(涙)

2009-03-22(Sun) 09:24 | URL | ぷんかぽ #-[ 編集]

はじめまして

隆さんてそんなにデビューが遅かったのですね。
初めて知りました。
以前テレビで「隠密奉行」をやっていたのをとても面白くみていたのを思い出しました。

2009-03-24(Tue) 22:56 | URL | 蒼月 #SqRphOik[ 編集]

訪問ありがとうございました

隆慶一郎の本を読んだ事はないのですが、デビューが70歳と言うのを知り、ちょっとそそられました。
それよりもっと興味を持ったのが「卵のふわふわ」です。今度読んでみたいと思います。ありがとうございました。

2009-03-25(Wed) 09:33 | URL | ころさん #-[ 編集]

こんにちは!

隆慶一郎と馴染むきっかけが網野善彦だったっていうのは全くわたしと同じです。
この2人は必ずセットで語られてるようですね。

面白いですよね、この人の本。

わたしは「花と火の帝」が好きなんですけど、作者が亡くなってしまった為に、物凄く良いところで中断してるんですよね。
この続き、かなわない望みなんですが、今でも読んでみたい気になります。

それと紛らわしい名前の作家が一人いるでしょう。
わたしは一度間違って手を出したことがあります(笑)

2009-03-28(Sat) 14:50 | URL | 薄荷グリーン #56UXBqNU[ 編集]

確かに紛らわしい名前の作家がいます(笑)

薄荷グリーンさんも隆慶一郎がお好きとは意外です(笑)
網野善彦との対談もあるらしいですから読んでみたいと思ってます。
紛らわしい名前の作家は○隆一郎ですよね(笑)
間違って買ったという人はたくさんいるみたいです。
以前少し読んだことありますが、
あの人の作品はちょっと辟易するところがありますよね(笑)
初期はなかなかいいんですが、
後期はまるで剣豪ポルノ(笑)
敬して近寄らず(笑)





2009-03-29(Sun) 00:10 | URL | -rainbird- #-[ 編集]

はじめまして

 時代物は私も好きで、結構読み返したり新たに読んだりしています。なんでしょうか、テンポが性に合うのでしょう。
 何でもせかされる中で、決断の正しさを考えるとき、思わず過去はどうだったか?ということに頼っています。
 中国古代から日本、西洋ものまで読みますが、やはり漢字文化圏のものが多いですね。
 ご訪問いただきまして、ありがとうございます。暫く体調不良だったため、ブログ管理が行き届いておりませんが、おいおい整理していきますのでよろしくおねがいします。

2009-04-19(Sun) 09:59 | URL | 愛姫 #iMK0FLrs[ 編集]

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