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時代小説、映画、JAZZ、それらを大人の楽しみとして愛でること。雨の夜の鴉のごとく、耳鳴りとともに日々の悪夢に苛まれつつも。

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悪党の魅力-山本一力「赤絵の桜-損料屋喜八郎始末控え」

「赤絵の桜-損料屋喜八郎始末控え」


(文春文庫)


江戸の損料屋に身をやつした元同心の喜八郎が、手下のいなせな男達と共に事件を解決していく損料屋喜八郎始末控えの第2弾です。
最初のやつはお江戸の経済小説&ミッション・インポシブルのごとく痛快で、それなりの人情話もはいって楽しめました。
いわしを山ほどの七輪で焼き、その煙がもうもうと立ち籠めるなかで執り行われた深川船着場の大祝言。
その場面が目に焼き付き、これはぜったいに続きも読まなければと考えていました(笑)
で、さっそくに手を伸ばしたというわけです。
表紙の歌川豊広の「観桜酒宴図」もいい雰囲気。

寛政元年に棄捐令が発布されてからというものは、江戸の景気はすっかり冷え込み、大店から小商人まで、商いは細る一方で、町々は元気を無くしていた。
そんな中、江戸北東の郊外、押上村に空前の規模の窯風呂「ほぐし窯」が普請されつつあった。
損料屋喜八郎が後ろ盾をしている米屋政八が、その窯風呂に助力している旗本青山家から三千両の融通を依頼され、政八はこれに応ずる。
この話は最初は蔵前一の札差伊勢屋に持ち込まれた話だったが、伊勢屋はこれを断っていた。
喜八郎はその窯風呂普請にきな臭いものを感じ、調査に乗り出すが……

2弾目は短篇をつないだいわゆるオムニバス形式。
最初に起こった事件が縦糸となって、各短篇がつながれている感じです。
でも前の短篇のオチがつかないまま次ぎにいくので、
あれ?……
の連続で、どうも読後感としては後味は良いんですが、ちょっとくすぶったまま肩すかし(笑)
でもこの小説をいなせな江戸の物語として読む。
江戸の町を背景とし、関係図の中で何気なく起こるささいな出来事。
それをあたたかい眼差しで見つめる世話もの、人情ものとして読むならそこそこ楽しめると思います。
その当時はさもあろうかと思うような江戸の四季の描写や、諸国から船で運ばれてくる物産の荷揚場として栄え、また辰巳芸者なんかを産んだ花街としても有名だった深川の風情。
仕事のあいまのなにげない職人同士の会話や、店先で立ち話している手代同士の会話のリアリティ。
これぞ江戸だっていう気がします。
煙草や煙管、着物に雪駄、そんな小物の描き方もなかなかのものでした。
そういう楽しみで読む小説としては申し分ないと思います。
でも果たしてこれが損料屋喜八郎というキャラクターを、ヒーローに押し立てて書かねばならないほどのものだったのかは、ちょっと疑問の残るところです。
登場人物が多くて、かかる比重がどうしても分散気味。
喜八郎という主人公のキャラが思うように立っていかない、これは最初のやつからありましたが、それが今回はもっと印象薄いです(笑)
それに較べて、気弱で情けなく、関西風に言うとあほでいらちの米屋政八の濃いキャラクター。
敵役ながら、義理にも厚く、そこはかとなく影もあって、懐の深い伊勢屋四郎左衛門。
彼らの登場場面が喜八郎より多い気がするのは気のせいか(笑)
とにかく喜八郎より周りがなんとなく良い。
とりわけ伊勢屋四郎左衛門は、このシリーズの本当の主役は彼ではないか(笑)
と思うくらい良いキャラに仕上がってます。
時代小説というのは勧善懲悪ではとても薄っぺらいものになってしまいます。
人間には裏表や本音と建て前、蔭、日向がありますね。
いくら悪でも行う悪にそれなりに背景がなければ、物語に奥行きが出ません。
伊勢屋四郎左衛門は物語に緊張を与えるなうての策謀家として登場しますが、
一方で息子を亡くしたことがトラウマになっている影のある男として描かれる。
欲深い敵役。でも本物を知る粋な江戸の男として喜八郎と並ぶ姿はとてもいい。
だからこの小説の後味が良いんだろうと思います。
そういう意味からいくと山本一力はきちんと勘所を押さえている気がします。
人情話の新しい書き手として、もはや確固たる位置を築きつつある山本一力ですが、この物語でも勘所を抑えつつ、人情話のそれへと大幅に傾きつつあります。
最後の章で、いっこうに進展しない喜八郎と江戸屋の若女将秀弥の結びつきを図り、同時に喜八郎の鼻をあかそうとして伊勢屋四郎左衛門が仕掛ける大芝居。
その大団円の結末は、そんな山本一力の面目躍如だという気がしますね。
思わず口元がほころんでしまいます。
そんなこんなで、次ぎにもし第3弾が出たとしたらやっぱり読むでしょうね(笑)

でも、これ、最初のやつを読んでおかなければ話がさっぱり見えてこないのは、やっぱりマズかろうと思うんですが、どうなんでしょう(笑)

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2008-10-25(Sat) 18:49| 山本一力の世界| トラックバック 0| コメント 0

お江戸の経済戦争-山本一力「損料屋喜八郎始末控え」

「損料屋喜八郎始末控え」

山本一力「損料屋喜八郎始末控え」
(文春文庫)


山本一力のデビュー作です。
後に直木賞を受賞し、新しい人情話の書き手として注目されることになりますが、あまりそういう面が出せようもないこの作品でも、
たしかな萌芽が見て取れるように思います。

上司の身代わりとして祐筆同心の職を辞した喜八郎は損料屋になります。
損料屋というのは庶民相手に鍋釜や小銭を貸す商売。
時代は田沼意次が失脚し、松平定信が大老になった頃。
すぐに寛政の改革が始まります。
旗本や御家人が札差からの多額の借金に喘いでいた時期です。
そんななか巨利を貪る蔵前の札差、伊勢屋や笹倉屋の陰謀に、
喜八郎を中心としたチームが立ち向かっていくというお話です。

なかなかにスリリングで面白い小説に仕上がってます。
経済小説のようでもあり、スパイ小説のようでもあります。
この物語の下敷きになっているのは寛政の改革で行われた棄捐令。
旗本や御家人が幕府から貰うサラリーの一部は米です。
この支給米は蔵米と呼ばれていました。
米ではいろいろと具合が悪いので、どうしても換金する必要があった。
それで幕府の米蔵から旗本や御家人に代わって、蔵米を受け取り、
米問屋に売却する商売が出てきた。それが札差です。
はじめ札差は代行手数料で儲けていたわけですが、
物価が上がり、旗本や御家人の暮らしが苦しくなると、
そのうち蔵米を抵当に高利のお金を貸すようになっていった。
それで札差は莫大な財力と権力を持つようになったというわけです。
そこに棄捐令です。
棄捐令とは札差に借金のある旗本・御家人らの借金を、
全部チャラにしますというお触れ。
実際の寛政の改革では、
120万両という途方もない金額がチャラになりましたが、
潰れた札差はほとんどなかったという話です。
どこかのリーマン○○とは大違い(笑)
しかし考えてみたらほんとムチャクチャな話です(笑)
今の時代に棄捐令なんかが行われたらさぞかし大変でしょうね。
それこそ大混乱です。
でも住宅ローンを青息吐息で払い続ける我が身とすれば、
ひそかに「ヤッタ!」と快哉を叫ぶかも知れませんが(笑)

ちなみに喜八郎が商う損料屋というのは、
いわば江戸のレンタルショップ。
江戸にはこの損料屋がたくさんありました。
鍋釜や布団なども貸しましたが、面白いのは「ふんどし」(笑)
当時ふんどしはかなり高価なもので、
なかなか気軽に買えるものではなかったようです。
洗い代も加算されますから、賃料も高かったようですが、
それでも買うより格段に安かったということなんでしょうね。

それにしても「いわし祝言」の章で行われる深川船着き場の大祝言の場面。
じつに印象的です。
祝祭的歓喜が充ち満ちて、しばらく脳裏から離れそうにないです(笑)

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2008-10-15(Wed) 00:08| 山本一力の世界| トラックバック 0| コメント 0

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